「哀しくも美しい話」と言い表されることが多く感じるが、「哀しくも美しい話」とだけ受け取れる作品でもない。読者である私の方にわだかまりがある。
“不吉な不安が秋風とともに人びとの心をかすめるような夕ぐれ、遺骸を運ぶ喪の列を、深々とした大笠の下からじっと見ていた鬼がいたというのは、まことに深い、静かなおそろしさを感じさせる。そして、この鬼の深い沈黙と凝視をおそろしいと感ずる心は、とりもなおさず斉明朝の政治そのものへの危惧や疑問、躊躇などであったはずである。”
鬼の研究 馬場 あき子 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480022752/
「朝倉山の上に、鬼有りて、大笠を着て、喪の儀(よそほひ)を、臨み見る」