「国[くに]」という言葉の使いづらさ、ていうか使いたくなさ
多くの場合「政府」と言いかえることができるし、そのほうがより明確でよい。
のだが、そうもいかないこともある。「国」レベルの法律(地方レベルの条例ではなく)、といった場合とか。これはいわゆる全国に適用されるということを意味しているので、「政府」に置き換えるとヘン。
また、近代国家より古い国家っぽい何かの場合、「政府」という語をあてはめるのはためらわれる。
すなわち「国」という語は融通無碍で、じっさい便利である(それを使わずに世の中のことを語るのはけっこう難しい)。だが、それはあいまいなことばだからこそだろうと思う。実はひどく抽象的な概念なのに、それはある種の身体感覚、情動、共同性に訴えかけるものだということになっている。あいまいゆえにさまざまな事柄を一つにまとめてしまう、このことばの危うさ。ひじょうに厄介なしろものだが、当面、いちいち腑分けして、別の語に言い換える作業を続けることが必要なのだろう
困ってしまう典型は、国際政治や外交を語る言葉。「日本とアメリカ」とか。まあこういうのはだいたい「日本政府とアメリカ政府」に置き換えても意味は通じるように思う。もちろん、くどくなることは否めない。が、ある地域を統治する政権と、その地域と、その地域に住む人間ぜんぶとを、自分はいっしょくたにしたくはないし、いっしょくたにしてよいとは思えない