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Kaguya Books「大阪SFアンソロジー:OSAKA2045」を読んだ。
静岡出身の自分にとって大阪は「テレビで見るエネルギッシュなよその地域」のイメージだった。大阪に行ったのも数回しかない。
大阪をテーマにしたSFはどんなものか、気になって読んでみた。

「大阪SFアンソロジー:OSAKA2045」感想 

正井さんの編集が鋭い。掲載一作目が、北野勇作「バンパクの思い出」。挙国一致のように猛進するイベント、置いてけぼりにされる市民生活、不安が募る。
中山奈々「Think of All the Great Things」未来というより今の問題。若年貧困の犠牲を増やすな。格差社会の是正が進まない焦燥感。
玖馬巌「みをつくしの人形遣いたち」は(存続危機のニュースを聞いていた)文楽に、未来へのヒントがあるのが面白い。
同じくテクノロジーが文化によりそう、宗方涼「秋の夜長に赤福を供える」ひらパーは聞いたことがあったが、菊人形は知らなかった。年月や災害を乗り越える伝統。携わる人々の想いがそれを支える。なぜ赤福と思ったが、伊勢の友人に「赤福の東限は名古屋」と聞いていたので懐かしかった。
正井「みほちゃんを見に行く」正井さん作品は時に抉るようなパンチが痛い。我がことすぎて。現代日本社会の女性の人生への容赦ないリアリズム。いつ同じ「不安定」な生き方になってもおかしくない年下の親族の長年の付き合いや、自分で選んだ生き方を全うした人を貶めることへの怒りがあるのが良かった。飛び立つ鳥の群れは唐突なようでいて、廃都の不気味な風景のようでもあり、本来は自由なはずの魂の比喩のようでもある。

蜂本みさ「せんねんまんねん」感想 

読むたびに涙が出るし、不安になるが、読む価値の高い作品。
SFともファンタジーとも言えるアイディアで、大阪の要素は言葉と通天閣だが、20世紀の戦争で各地のランドマークが、人生が、破壊されたことを思い出させる。
対話のできる、他者と共存する社会を作れそうな子どもが、大人の欺瞞に満ちた暴力に飲み込まれていく悔しさ。
戦争が当たり前になっていく社会。
危機の時代を生きる子どもの対話のラッパが、警報になっている。

virtualgorillaplus.com/stories

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