朝起きるたびに同じことを思うけど、僕は自己意識を持ちながら死ぬことを運命づけられた人間のような動物に本当に興味が尽きないよ。生きていることは奇跡というけれど、それは確率論的に正しいってだけではなく生物学的にもそうで、高校の生物基礎の教科書をパラパラするだけでも人体のバロック的な精巧さに圧倒される。こんな複雑なものはとても自分には作れないと思う。

アルス・ロンガとか言っても実際に生きている人間に比べて人間の作ったものなんて大したもんじゃないと思うんだ。その人がそこに生きているだけで死んだ状態より価値があるというのはきっと真理だと思う。個人の感想です。

もともとルネサンス期に「発見」されたヒューマニズムっていうのはそういうものだよね。手術で王様の腹を開いたら自分と同じ人間だったっていう驚き。これが世俗主義に説得力をもたらした。ちなみに今ある「人道主義」はその末裔。

それで『王の病室』の一話読んだんだけどさ、なんか興醒めしちゃうんだよね。医者ってすごい仕事だなとずっと思ってきたから。いやさ、話そのものはあれだけじゃストーリーにならないし、ひっくり返される可能性も高いと思う。作者があのパイセンみたいな医者をいいって考えてるわけじゃないこともわかる。でも多分にヒステリックな反応かもしれないけど、あの漫画読んでから医者にかかって「この人ももしかしたらこんなこと考えてるんじゃないか」って思う患者がいるとしたら、それ自体は小さな綻びでも社会不安に繋がるんじゃないかな。終身医療や延命治療が数十年後に誰もが直面する現実で、形而上では命の尊厳で形而下では治療費でみんなが頭を悩ませるスパッと割りきれない問題だなんてことはああやってショッキングな形で提示されないとわからないものだろうか。

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ネット受けしそうな言い方で言い換えると「大して才能のない作家がスキャンダリズムで耳目を集めるためにタブーに踏み込むの本当に最低だよね」となる。

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