『大雷雨』(1941、ラオール・ウォルシュ)
電力線の保守作業員達の話。大雷雨でもなんでも停電が起きればすぐに復旧のために出動するボーイズたち、豪雨の中でも電柱とか高圧鉄塔にするすると登っていくのが面白い。
でもお話は、EGロビンソン(ベテラン作業員だけど事故って登れなくなり現場監督に昇進)、マレーネ・ディートリッヒ(年長作業員の娘だが父親とは確執があって断絶しナイトクラブのホステス(キャバ嬢的な)をやっていてロビンソンに求婚される)、ジョージ・ラフト(ロビンソンの同僚で親友)の三人の間で展開されるメロドラマが中心ですね。名優の共演で、出てくるだけで纏ってる空気感がすごくてそれを見てるだけで楽しい。ディートリッヒってなぜあんなに立ってるだけ、座ってるだけですごいのか。

一つ気になったのが、ジョージ・ラフトのキャラはゲイ設定ではないのかなということ(そう解釈すると話の流れが理解しやすいという意味で)で、気のせいかと思って最初の方を見直したらそれを示唆する符牒みたいな場面があった。’41年だからヘイズコード下で同性愛表現禁止の時代で、明示的ではないけど。

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『大雷雨』のスーツケースの話 

フェイ(ディートリッヒ)の父親でハンク(ロビンソン)とジョニー(ラフト)の年長の同僚であるデュバルがジョニーに、娘が1年ぶりに刑務所から出所する、刑務所で面会したその前は15年も会ってなかった、バツが悪いので一緒に迎えに行ってくれないかと頼む。刑務所では門の鉄格子の向こうにフェイが現れる(フェイの初登場シーン)が、父親の姿を見ても冷たい素振りで、「タバコはあるか」と聞くだけ。父親はここでフェイが手に下げたスーツケースを預かろうとするが、それを受け取った瞬間突然蓋が開いて中身が地面にばら撒かれてしまう。慌てて散らばったものを拾って回る父親の様子をフェイはちらっとみるが突き放したような態度はそのままで、父親にとって気まずい空気が流れる。
この場面の後それほど間をおかず、父親は作業中の事故で感電死する。ハンクとジョニーが伝えにいくが、フェイの冷たいままで、「あの人のことはほとんど何も知らないけど、あの人が母にやったことは絶対忘れない」と言う。仲間からは親父と呼ばれ若い同僚をboyと呼ぶ関係だったが、家族に対しては過酷な態度を取りその後の人生も大きく狂わせたことがわかる。スーツケースのシーンの示した居心地の悪さが示唆したのはそれだった。

『大雷雨』のスーツケースの話 続き 

同じスーツケースがラストシーンに再び登場する。ハンクが高圧鉄塔から転落死しそのことに責任を感じたフェイは一人シカゴへと旅立とうと、夜のバス停に一人立っている(離れた距離からフェイを小さく捉えたとても美しいショット)。そこにジョニーが現れ近づいたことこで、手前からバスがやってきて、二人の姿をその後ろに隠すがまもなくバスは発車し去っていく。バス停には二人がそのまま立っていて、フェイが立ち去るのをやめたことがわかる。その時最初はフェイの手にあったスーツケースがジョニーの手に握られているのが見える。父親と娘の断絶を表現したのと同じスーツケースがここでは確執のあった二人の和解を表現していると言うことなんだろう。
と、言うようなことを2回目見て初めて気がついたけど、ウォルシュってそういう仔細な演出をする人だったんだなぁと言うことを知った。

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