『LAMB/ラム』20230129
大人向けの暗喩に満ちた話、もしくは不気味なおとぎ話、という感じ。鑑賞後、色々な事を想像させる。
マリア、子羊…というとキリスト教を思う。最後に登場するあの御方、姿は異教のものに見えるけれど、彼が神だったのかな?
以下、ネタバレあり
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神の子羊を捧げた(連れ去られた)事で、マリアの罪は償われたという事?そもそも、マリアの罪は羊殺しだけなのかな?夫を子羊も失うって、結構大きな代償だと思うけど(動物の命を軽視するわけじゃないけど、罪に対して罰が重過ぎる気がする)。
あと義弟が誘惑してくるのも、滅茶苦茶意味深だったけど、どういう事だったのかな…マリアは最後まで拒んだわけで、罪は犯していないはず。
マリアを主人公として観ていたので、マリアが罰を受けたと思ったけれど、夫婦が罰を受けたとも考えられる。その場合の罪は、母羊から子羊を奪った事かな。片や家族を失い、片や自らの命を失うという、それぞれに違う罰だったというのも、何故だろうとますます悩んでしまう。
あれこれ推察して楽しむのもありだし、ただ観たまま、異形の子を我が子にしようとして怒りを買った夫婦の不思議なお話、と受け取る事もできる。
不思議な作品でした。
『最後の決闘裁判』20221105
観た後、滅茶苦茶凹んだ。この女性差別甚だしいお話が昔話ではなく、現代の話でもあるから。
以下ネタバレあり
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強姦ではないと言い切ったル・グリ、彼としては「お互い惹かれていた(≒合意があった)」という認識だったのか。傲慢な勘違い野郎だな。
勝者なのに全く良かったねと思えないカルージュ、家父長制を象徴する胸糞野郎でしたね。
悲しいのは、マルグリットが憎む相手が、強姦した男だけでなく決闘に挑んだ夫でもある事。妻を己の財産と見なし、名誉を傷付けられたと怒る夫もマルグリットの味方ではない。家父長制がいかに女性にとって有害かを痛感した。
今、友人が夫とその親の女性蔑視発言に晒されていて(「専業主婦が偉そうに息子に指図するな」と舅に言われたとか…)、家父長制の呪いは21世紀でもばりばりあるんだな…と悔しい思いをしているので、まだまだ闘わなくては、とますます思いました。
監督やこの作品の男を演じた俳優達に、女性差別と一緒に闘ってくれると期待できる事は、希望だと思いますね。
実は、ベンアフやMデイモンの良さが昔から分からなくて、好きではなかったけれど、彼らがこの作品を女性脚本家を交えて書いた事、女性の敵を演じた事は好印象でした。
歴史は過去ではない、今日も未来の歴史の一部になるんだ!歴史をアップデートしていこうぜ!とひとり病室で熱くなってしまった(笑) ←鑑賞時、入院中でした😅
自分の子ども達に、歴史を学び現代社会について考える時の立ち位置を示す為の参考になりました。
これは繰り返し観たくなる作品だなぁと思います。出逢えて良かった。
『イニシェリン島の精霊』20230425
知性・地位の高い者と低い者の衝突の話かな。
正しくも賢くもない前者が後者を叩きのめすのが観ていて辛いし、後者の凡庸で退屈なところがもどかしい。
分かりやすい“正しい人物”を配置せず、どちらにも感情移入しにくいように描かれていると思う。
シボーンが唯一の希望だった。
↑ シボーン
↑ コルム
その他島民
↓ パードリック
↓ ドミニク
という上下関係だったと思うけど、自分がこの構図のどこにいるつもりで鑑賞しているのか、と考えると気まずくて居心地の悪さを感じた。
ディズニープラスだとカットされたシーンが観られるんですが、ドミニクと父親の朝のベッドでの会話のシーンが本当に胸糞で、この父親が警官・父親である故に人間関係の上位にいる事に憎しみを覚える。
コルムに対しても、一流ぶってる二流というところに嫌悪感を抱いた。本当の一流は、自分よりも能力が低い人間に対しても礼節は弁えると思う。
コルムにも言い分はあるのかも知れないけど、でもあの態度はパードリックを馬鹿にしてないとしないよね。シボーンにはきっとしない。
パードリックの愚かさ以上に、コルムの傲慢さが観ていて辛かった。