『LAMB/ラム』20230129
大人向けの暗喩に満ちた話、もしくは不気味なおとぎ話、という感じ。鑑賞後、色々な事を想像させる。
マリア、子羊…というとキリスト教を思う。最後に登場するあの御方、姿は異教のものに見えるけれど、彼が神だったのかな?
以下、ネタバレあり
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神の子羊を捧げた(連れ去られた)事で、マリアの罪は償われたという事?そもそも、マリアの罪は羊殺しだけなのかな?夫を子羊も失うって、結構大きな代償だと思うけど(動物の命を軽視するわけじゃないけど、罪に対して罰が重過ぎる気がする)。
あと義弟が誘惑してくるのも、滅茶苦茶意味深だったけど、どういう事だったのかな…マリアは最後まで拒んだわけで、罪は犯していないはず。
マリアを主人公として観ていたので、マリアが罰を受けたと思ったけれど、夫婦が罰を受けたとも考えられる。その場合の罪は、母羊から子羊を奪った事かな。片や家族を失い、片や自らの命を失うという、それぞれに違う罰だったというのも、何故だろうとますます悩んでしまう。
あれこれ推察して楽しむのもありだし、ただ観たまま、異形の子を我が子にしようとして怒りを買った夫婦の不思議なお話、と受け取る事もできる。
不思議な作品でした。
映画版『ハミルトン』20221028
ラップバトルで政治家の討論を表現するって、一見斬新でミスマッチに思えるけれど、言葉で双方が主張し、スピーチのスキルが重要で、非暴力で行われる事等、実は親和性は高いんですよね(アイヌの議論や談判であるチャランケとも通じるとも思いました)。
リン=マニュエル・ミランダの音楽を聴きたくて『メリー・ポピンズリターンズ』も続けて観ましたが、彼の才能は欧州的なクラシックよりもヒップ・ホップやポップの方がより輝いている気がします(モアナの音楽も個人的には大好きです)。イン・ザ・ハイツも楽しみ。
Disney+の「ハミルトン:歴史が君を見つめている」という関連番組も面白かった。番組内で一番興味深かったのは、ハミルトンがアメリカ社会に与えた影響や、BLMとの関わりについてキャスト達が語っていたところ。
BLMと声を上げる人達も、より良い国を創っていこうしていて、その行動は建国の父や母と同じなんだというメッセージにハッとしました。
この作品のメッセージは“過去の偉人に学ぼう”じゃないんだ、“私達もより良い国を創ろう”が最重要なんだ…と。
これは日本の芸能ではあまり見られない動きかも。歴史に受け身になってしまい、当事者意識を持ちにくい。
『イニシェリン島の精霊』20230425
知性・地位の高い者と低い者の衝突の話かな。
正しくも賢くもない前者が後者を叩きのめすのが観ていて辛いし、後者の凡庸で退屈なところがもどかしい。
分かりやすい“正しい人物”を配置せず、どちらにも感情移入しにくいように描かれていると思う。
シボーンが唯一の希望だった。
↑ シボーン
↑ コルム
その他島民
↓ パードリック
↓ ドミニク
という上下関係だったと思うけど、自分がこの構図のどこにいるつもりで鑑賞しているのか、と考えると気まずくて居心地の悪さを感じた。
ディズニープラスだとカットされたシーンが観られるんですが、ドミニクと父親の朝のベッドでの会話のシーンが本当に胸糞で、この父親が警官・父親である故に人間関係の上位にいる事に憎しみを覚える。
コルムに対しても、一流ぶってる二流というところに嫌悪感を抱いた。本当の一流は、自分よりも能力が低い人間に対しても礼節は弁えると思う。
コルムにも言い分はあるのかも知れないけど、でもあの態度はパードリックを馬鹿にしてないとしないよね。シボーンにはきっとしない。
パードリックの愚かさ以上に、コルムの傲慢さが観ていて辛かった。
歴史は過去ではない、今日も未来の歴史の一部になるんだ!歴史をアップデートしていこうぜ!とひとり病室で熱くなってしまった(笑) ←鑑賞時、入院中でした😅
自分の子ども達に、歴史を学び現代社会について考える時の立ち位置を示す為の参考になりました。
これは繰り返し観たくなる作品だなぁと思います。出逢えて良かった。