『最後の決闘裁判』20221105
観た後、滅茶苦茶凹んだ。この女性差別甚だしいお話が昔話ではなく、現代の話でもあるから。
以下ネタバレあり
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強姦ではないと言い切ったル・グリ、彼としては「お互い惹かれていた(≒合意があった)」という認識だったのか。傲慢な勘違い野郎だな。
勝者なのに全く良かったねと思えないカルージュ、家父長制を象徴する胸糞野郎でしたね。
悲しいのは、マルグリットが憎む相手が、強姦した男だけでなく決闘に挑んだ夫でもある事。妻を己の財産と見なし、名誉を傷付けられたと怒る夫もマルグリットの味方ではない。家父長制がいかに女性にとって有害かを痛感した。
今、友人が夫とその親の女性蔑視発言に晒されていて(「専業主婦が偉そうに息子に指図するな」と舅に言われたとか…)、家父長制の呪いは21世紀でもばりばりあるんだな…と悔しい思いをしているので、まだまだ闘わなくては、とますます思いました。
監督やこの作品の男を演じた俳優達に、女性差別と一緒に闘ってくれると期待できる事は、希望だと思いますね。
実は、ベンアフやMデイモンの良さが昔から分からなくて、好きではなかったけれど、彼らがこの作品を女性脚本家を交えて書いた事、女性の敵を演じた事は好印象でした。
『イニシェリン島の精霊』20230425
知性・地位の高い者と低い者の衝突の話かな。
正しくも賢くもない前者が後者を叩きのめすのが観ていて辛いし、後者の凡庸で退屈なところがもどかしい。
分かりやすい“正しい人物”を配置せず、どちらにも感情移入しにくいように描かれていると思う。
シボーンが唯一の希望だった。
↑ シボーン
↑ コルム
その他島民
↓ パードリック
↓ ドミニク
という上下関係だったと思うけど、自分がこの構図のどこにいるつもりで鑑賞しているのか、と考えると気まずくて居心地の悪さを感じた。
ディズニープラスだとカットされたシーンが観られるんですが、ドミニクと父親の朝のベッドでの会話のシーンが本当に胸糞で、この父親が警官・父親である故に人間関係の上位にいる事に憎しみを覚える。
コルムに対しても、一流ぶってる二流というところに嫌悪感を抱いた。本当の一流は、自分よりも能力が低い人間に対しても礼節は弁えると思う。
コルムにも言い分はあるのかも知れないけど、でもあの態度はパードリックを馬鹿にしてないとしないよね。シボーンにはきっとしない。
パードリックの愚かさ以上に、コルムの傲慢さが観ていて辛かった。
映画版『ハミルトン』20221028
ラップバトルで政治家の討論を表現するって、一見斬新でミスマッチに思えるけれど、言葉で双方が主張し、スピーチのスキルが重要で、非暴力で行われる事等、実は親和性は高いんですよね(アイヌの議論や談判であるチャランケとも通じるとも思いました)。
リン=マニュエル・ミランダの音楽を聴きたくて『メリー・ポピンズリターンズ』も続けて観ましたが、彼の才能は欧州的なクラシックよりもヒップ・ホップやポップの方がより輝いている気がします(モアナの音楽も個人的には大好きです)。イン・ザ・ハイツも楽しみ。
Disney+の「ハミルトン:歴史が君を見つめている」という関連番組も面白かった。番組内で一番興味深かったのは、ハミルトンがアメリカ社会に与えた影響や、BLMとの関わりについてキャスト達が語っていたところ。
BLMと声を上げる人達も、より良い国を創っていこうしていて、その行動は建国の父や母と同じなんだというメッセージにハッとしました。
この作品のメッセージは“過去の偉人に学ぼう”じゃないんだ、“私達もより良い国を創ろう”が最重要なんだ…と。
これは日本の芸能ではあまり見られない動きかも。歴史に受け身になってしまい、当事者意識を持ちにくい。