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古川日出夫『グスコーブドリの太陽系―宮沢賢治リサイタル&リミックス―』

グスコーブドリの伝記を読もうと思ってなぜかこの作品を手に取った。古川作品はいくつか読んできたけれど、宮沢作品の語り直しでありながら、筆者自身の過去に深く潜っていくような読み心地がとても不思議だった。現実と非現実を行き来するような作品。(もっとも古川作品ではこの現実⇔非現実を行き来するような作風は珍しくないけれど)
同時に、過去に読んできた作品が、このような苦悩のなかで生まれたのかという驚きもあった。

shinchosha.co.jp/book/306078/

グスコーブドリの太陽系を読んでいる最中、やっぱり、3.11が東北地方に与えた影響ってすさまじいものがあるんだということを改めて思い知った。
どうしても関西に住んでいる人間には、その切実さに、実感をともなった共感がしづらかった(し、現在も実感は薄いと思う)ことを、古川作品を読んでいると考えさせられる。

わたしは同著者の『あるいは修羅の十億年』がめちゃくちゃ好きなんだけど、あのなかで描かれているのは紛れもなく3.11で被害をうけた『島(内部にいる人間は森と呼ぶ』出身者たちの怒りだったと思う。
登場人物のサイコが描く小説のなかで主人公は言う。
”あたしたちは、だまらない。”

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