MastodonやMisskeyが、それぞれ別々に設置されている違うプログラムなのに、お互いに繋がることができる仕組みは、主に『ActivityPub』という通信規約(プロトコル)によって実現されています。
ActivityPubでは、私たち一人一人のアカウントをActorと呼びます。
Actorは、別のActorと、「フォローしたい」「いいよ」というやりとりをします。
投稿に対して「好き!」って反応したり、新しいノートを「作ったよ」、ノートをみんなに「アナウンス」します(ブースト・リノート)
これらのやりとりの語彙があらかじめ定義されています。
先程の例の順番でいうと、Follow, Accept, Like, Create, Announce というActivityとして定義されています。
Activityは、何を対象とするかを伴っていて、Actorを対象とするときもあれば、投稿(短い文章)を表す表現であるNoteや、「フォローしたい」というリクエストを許可したり、送った側が取り消すために、「フォローしたい」というActivityそのものを対象として指定することもあります。
このあたりの約束ごとが共通化されているため、それに従うことで、お互いのやりとりが可能になっています。
さて、ここまでサーバが説明されていません。存在感ゼロですね!
実は、ActivityPubでは、サーバーを直接表すActorのような定義がありません。
便宜上、サーバーにもActorを割り当てることはありますが、主役ではありません。
とはいえ、サーバーの存在は別の形で表現されていて、効率の改善に貢献しています。
先程のActor毎のinboxがありましたが、この他にshared_inboxという、同じサーバのActorが共有して使うinboxがあります。
このshared_inboxにActivityを送ると、Activityに指定しておいた宛先のActorに対して、相手サーバーに委託してまとめて送ることができるようになります。
「あなたのサーバの、私のフォロワーに対して、Create - Noteしたのでよろしくね!」という感じで、shared_inboxに一回だけ送れば済む仕組みです。
実際の動きとしては、followersコレクションのActorのshared_inboxを調べ、同じものは一つにまとめてしまい、送信件数を最小限に減らしています。
なお、shared_inboxが無い場合は、個々のinboxに送ります。
@noellabo AというサーバーにいるActor、A1さんとA2さんとA3さんが、BというサーバーにいるB1さんをフォローしているとき、B1さんが投稿をcreateした場合、shared_inboxがなければA1さんとA2さんとA3さんそれぞれに3回届けないといけないところを、shared_inboxがあればAサーバー用のそれに1回届ければいいってことですか?
@kussy_tessy そうです。
B1さんが、自分のフォロワーであるA1さん、A2さん、A3さんの、それぞれのshared_inboxを調べると、同じ宛先表現になっています。
この場合は、まとめて1回で済ませてOKです。
実際、相当な節約になっていますので、この仕組みがないとかなり大変です。
@noellabo 「分散型SNS」でありながら、あまりに分散するとsharedの意味がなくなってしんどいだけってのは面白いですね。
@kussy_tessy たとえば外部配送をリレーに全部委託してしまって、自分では手抜きをするノードを作るという発想をすることもできるので、実はいろんなやり方があります。(そういう実装はまだ作られていないと思いますが)
@noellabo なるほど。Aサーバー・Bサーバー・Cサーバーへの配送を請け負うABCリレーサーバーみたいなのを作って、そこに押し付けるということも原理的にはできるってことですね。
配送とはうまく言ったもので、郵便局も同じように近い住所のものは束ねて集配局に送りますもんね。
以上は、ActivityPubの枠内で行われる仕組みについて説明したものですが、
サーバーはinboxに送られてきた新しい投稿が公開してもいいものだと判断したときに、
連合タイムラインという特別な仕組みを用意していて、そこでみんながみられるようにしたり、
同じサーバーのActorが発行した新規投稿のActivityを使って、ローカルタイムラインという仕組みを実現したり、
いろいろとActivityPubの仕組みには存在しない付加機能を提供しています。
サーバーはActorのコレクションを持っているので、他のActorを探す機能を提供することができます。
投稿のハッシュタグをコレクションして、ハッシュタグで投稿を一覧する機能を持たせたりもしています。
ActivityPubにはハッシュタグの共通の表現は用意されていますが、それをどう使うかについては定義されていません。
そのあたりは、ActivityPubで通信する個々のサーバーにより定義され、実装されています。
このActivityPubの規格外の部分は、各実装同士がお互いの機能を理解して、互換性をとる努力をすることで、相互のやりとりを実現しています。
かなり自由だけど、それなりに大変な世界です。