2023年2月11日
ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』「盗まれたシャツ」読了。
文庫本で10頁と1行しかない短編なのだけれど、凄まじいな。
主人公は難民キャンプに住んでいて妻子がいる。配給は滞りがち。キャンプの倉庫には大量の物資があるので、そこから少しぐらい盗みをしてもいいんじゃないかぐらいは思ってる。そうしたら、家族はパンを食べられるし、息子には新しいシャツを買ってやれる。寒い中、たいした収入にもならないどぶさらいをやっていると、いけすかない知人がやってきて物資のちょろまかしをやらないかと誘ってきたので、その脳天をかち割って、終わり。
#読書
ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』「彼岸へ」読了。
文庫本で15頁の短編。熱いスープが冷めるまでのまどろみの中、彼岸から此岸への糾弾。これも、感想が難しい。というか、読むのが難しい。
題名が「彼岸から」ではなく「彼岸へ」なんだよな。
作中の “皆さん、パレスチナ人の難民キャンプをぜひ見ておくべきです。それが消滅してしまわないうちに” という言葉が痛い。
これは、この小説を読んでいる、わたしのこの行為が、まさにこういうことなので。
#読書
ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』「ハイファに戻って」読了。
新婚時代にハイファイという地中海沿岸の街に住んでいた夫婦が20年振りに赴く、その車中という、わりあいに穏やかな雰囲気で始まります。
その帰郷は、住人として帰るわけではなく、旅行者として立ち寄るという、複雑なもので。
作中の20年前、イスラエルの侵攻で居住を追われ、混乱の中そこに生後5ヶ月の長子を置き去りにしてしまったことが語られます。
20年後、夫婦は長子との再会を果たすが、長子は祖国を守るためにイスラエルの兵役に就ていた、という話でして。
この長男が「あなた達は息子を取り戻すために戦うべきだった」と語るわけです。それを聞いている主人公は、次男がパレスチナの義勇軍に参加したいというのを止めるべきでなかったと、悔いてるわけです。
その場いる母親は、長男の言葉が分からず「彼は何と言ってるの?」と尋ねるわけです。
わたしはこの話に何を思えばいいのでしょうか?何も思えないし、思いたくないですよ。
長男を養育したユダヤ人の夫婦はポーランドからの移住者で、アラブ人の子供を養育する程度には善良ではある。
奪われたからと言って、他者から奪ってはいけなかったのだと、わたしは安全圏から嘆くしかできない。
#読書