この間通りすがりの古本屋の店頭に、瀬尾七重の『銀の糸あみもの店』の旺文社版の単行本が並んでたのを見て、ちょうど数日前に今読めるかな~と調べてた本だったので声を上げて喜んでしまったのでした。そして当然購入した。1979年初版、800円也。
初めて読んだのは小学生のころ講談社文庫にて。子供向けの童話集だったにも関わらず、都会の薄暗がりの陥穽に嵌ってしまって抜け出せないような表題作の怖さを忘れられずに幾星霜。この本全体がそういう短編ばかりだったと記憶してたのですが、読んでみたらほかの話はシュールだったり可愛かったりして、表題作のみがちょっと異質な暗さを湛えていたのでした。この不思議な暗さ、その後の読書傾向に大いに影響してるなぁ。
読んでるうちにバッテンの木や陽気で優しい秋の若者のことがどんどん記憶から蘇ってきて、懐かしさに加えて全部を怖い話と誤解しててすみませんの気持ち。
どの短編も都会を舞台に、町の角を曲がった先に異界がぽっかり口を開けている、的な不思議さがあって、明るい話は例えばジョーン・エイケンの短編が好きな人にもおすすめしたい良質なエブリディ・マジックです。
キンドルに講談社文庫版があるのですが、繊細なイラストに彩られた懐かしい本を手に入れられて、本当に嬉しい。
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今手元にある『銀の糸あみもの店』も牧村慶子挿絵のもので、表紙はショールを被って横たわる銀の糸あみもの店の主人公です。今調べたら講談社版の表紙とは違うようですが、中の挿絵は一緒だと思います。繊細で美しい挿絵に惹かれて文庫を手にしたので、長い年月を経て四六判を手に入れられて感無量です。
『魚料理もどうぞ』、調べたら古書価格がとんでもないことになっていて驚きましたが、図書館で取り寄せできるようなので、いつか読んでみます!