にゃ!つのくん!(夏野くんが人狼なのにネコ。屍鬼とは和解?してる)
尾崎病院の庭にある大きい木の枝に体を預け欠伸を一つ。ある日起きたら頭に猫耳と尻尾が生えてた。原因は不明。先生は『不明なことは大抵あいつのせいだ』と鼻息荒く桐敷家に乗り込んだけれど、辰巳は『流石に僕ができる事ではないですよ』と苦笑い。先生はそれが気に入らなかった様で、持ち込んでいた木槌を振り回して辰巳を追いかけまわしていた。辰巳は『理不尽です〜!』と叫んでいたけど、とても嬉しそうだったので俺が止めさせてさっさと尾崎病院に帰ってきた(辰巳が付いてこようとしたけど、先生が手作りの十字架で撃退してた)結局原因は分からず、特に不便さはないのでそのままにしているけれど、人狼だけだった時よりも五感が敏感になっているようで声や気配等が気になっていたら『昔は俺もそうだったな。木登りなんかして人を避けてた』と学生時代の先生にならって、先生を見れてなおかつ他の人間には見られない木の上に避難するようにした。木の上は風通しもよく尚且つ人は来ない。顔を上げれば遠目ではあるものの大体先生を見ることができる、快適な生活を過ごしている。
「夏野くーん」
遠くで先生の声が聞こえ、頭の上の耳がピクピクと動く。
にゃ!つのくん!2(夏野くんが人狼なのにネコ。屍鬼とは和解?してる)
「何処に居るんだい?夏野くん」
その声を聞くだけでゴロゴロと喉が勝手に鳴ってしまう。呼ばれて嬉しいと体現してしまうのは少々厄介ではあったが、先生が嬉しそうに笑うから気にしないことにした。
枝から顔を上げ声のする方を見れば、診察室にある掃き出し窓が開き、先生が姿を見せる。
「そろそろご飯にしよう?お昼は夏野くんの好きな鮭だよ」
別に鮭が好きなわけじゃない。魚の中では好きではあるけれど、先生の質問のタイミングが悪かったんだ。いや、俺も好きっていったタイミングも悪かったけど。
「夏野くーん」
先生がいつも漂わせている煙草のニオイが強くなる。煙草のにおいは嫌いだけど、先生のにおいは大好きだ。もう少し近寄ってくれたら声をかけよう。喉の音でバレちゃうかな?近寄ってくる先生を見つめながら枝に腰掛け降りるタイミングを測る。先生早く来て。あと5歩…3歩…1歩
「先生」
上から声をかけると、先生が顔を上げる。それを確認してその胸目掛けて飛び降りれば、先生は慌てて腕を広げてくれる。空中で猫に変わり広い胸にしがみつけば、先生は俺を抱きしめながら「びっくりした」と呟いた。胸に付けている耳には心臓の早鐘が聞こえていて、その言葉に嘘偽りがないことを教えてくれる。