にゃ!つのくん!2(夏野くんが人狼なのにネコ。屍鬼とは和解?してる)
「何処に居るんだい?夏野くん」
その声を聞くだけでゴロゴロと喉が勝手に鳴ってしまう。呼ばれて嬉しいと体現してしまうのは少々厄介ではあったが、先生が嬉しそうに笑うから気にしないことにした。
枝から顔を上げ声のする方を見れば、診察室にある掃き出し窓が開き、先生が姿を見せる。
「そろそろご飯にしよう?お昼は夏野くんの好きな鮭だよ」
別に鮭が好きなわけじゃない。魚の中では好きではあるけれど、先生の質問のタイミングが悪かったんだ。いや、俺も好きっていったタイミングも悪かったけど。
「夏野くーん」
先生がいつも漂わせている煙草のニオイが強くなる。煙草のにおいは嫌いだけど、先生のにおいは大好きだ。もう少し近寄ってくれたら声をかけよう。喉の音でバレちゃうかな?近寄ってくる先生を見つめながら枝に腰掛け降りるタイミングを測る。先生早く来て。あと5歩…3歩…1歩
「先生」
上から声をかけると、先生が顔を上げる。それを確認してその胸目掛けて飛び降りれば、先生は慌てて腕を広げてくれる。空中で猫に変わり広い胸にしがみつけば、先生は俺を抱きしめながら「びっくりした」と呟いた。胸に付けている耳には心臓の早鐘が聞こえていて、その言葉に嘘偽りがないことを教えてくれる。
にゃ!つのくん!3(夏野くんが人狼なのにネコ。屍鬼とは和解?してる)
「なぁ〜う」
ごめんなさいと一声鳴いて頬を舐めれば、先生は「まったくもう」
と怒った様な口調で言うけれど、声と顔は優しくて。その声と顔に益々喉がゴロゴロと鳴ってしまう。それに先生が笑って顎の下を優しく擽り
「ご飯、食べようか」
と言って頬を擦り寄せてくれるから、俺はもう一度愛らしく鳴いて先生の煙草味の唇をザラリと舐めたのだった。