フォロー

謡曲「土蜘蛛」の前半。
病に伏している源頼光を見知らぬ僧形の者が訪れる。じつは蜘蛛の妖怪である。

僧 「いかに頼光、御心地は何と御座候ぞ
頼光「不思議やな、誰とも知らぬ僧形の深更に及んで我を訪ふ。その名はいかにおぼつかな
僧 「おろかの仰せ候や。悩み給ふもわがせこが来べき宵なりささがにの
頼光「蜘蛛の振る舞いかねてより、知らぬといふになほ近づく。姿は蜘蛛の如くなるが
僧 「かくるや千筋の糸筋に

僧の出現を怪しむ頼光に、僧が「愚かなことをいうものだ。そなたが病に苦しんでいるのは蜘蛛のせい――」と言いかけると、頼光は「そんなものは知らぬ」と返すのだが、僧は正体をあらわしてさらに近づき、蜘蛛の糸を投げかけて頼光を絞め殺そうとする。

ここにある「わがせこが来べき宵なり」以下のフレーズは、『古今集』にある衣通姫(そとおりひめ)の恋歌「わがせこが来べきよひなりさゝがにの蜘蛛のふるまひかねてしるしも」の転用。今夜はきっとあの人が来てくれる、蜘蛛のようすでそれがわかるの――というほどの意。

謡曲「土蜘蛛」の続き。

千筋の糸を投げつけてくる妖怪を、頼光が枕元の刀でなぎ払うと妖怪の姿は消え、残るは血の跡ばかり。このとき使われた刀は膝丸といったが、頼光はこれを期に蜘蛛切丸と変えることにする。歌舞伎の『戻橋背御摂』で各派が奪い合う蜘蛛切丸がこれ。

「土蜘蛛」の後半は、頼光の家臣たちによる葛城山の土蜘蛛退治。
土蜘蛛は討たれて終わるが、『戻橋背御摂』の設定ではこの土蜘蛛を女郎蜘蛛とし、その妖術を将門の娘・七綾姫が引き継いだとする。

ログインして会話に参加
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。