『ある奴隷少女に起こった出来事』を読んでる(つらい内容も多いので少しずつしか読み進められない)

秘密組織「地下鉄道(アンダーグラウンド・レイルロード)」の指導者のひとりとして、黒人奴隷の北部への逃亡を支援した黒人女性ハリエット・タブマンの伝記です
shinchosha.co.jp/book/220111/

「奴隷の雇い入れ更新日は、南部では一月一日と決まっていた」という一文を読んで、「だからリンカーンの奴隷解放宣言は一月一日だったのか!」と膝を打った

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自伝では、周囲の人に迷惑をかけないために、偽名が使われている。

リンダ(ハリエット)が15歳になると、40歳以上も年上のご主人、ドクター・フリントが性的な意図を持って接触してくるようになったというくだり、つらい。リンダは大好きな祖母にも悩みを相談することができずに苦しむ。

こういう事例は、当時の南部ではめずらしくなかった。
ヴァージニアのプランター経営主だったトーマス・ジェファーソン大統領も、奴隷貿易や奴隷制拡大には反対していたが、黒人奴隷を所有していた。

・ジェファーソンは28歳の時に23歳の未亡人マーサと結婚したが、10年後に亡くし、ショックを受けてもう二度と結婚しないと決心した。しかし、43歳で27歳の人妻マリア=コズウェーと恋愛関係になり、二人で散歩中に調子に乗って柵を跳び越えようとして右手をくじき、マヒが残った。また、自分の奴隷だった30歳年下のサリー・ヘミングスとは、38年間も愛人関係が続き、子供が数人できたといわれている。サリーは4分の1が黒人の血。先妻とは異母姉妹だったと考えられている。サリーの成人した子ども4人のうち2人は奴隷から解放されたが、サリーは生涯奴隷身分のままだった。

y-history.net/appendix/wh1102-

財産分与は父系になっているのに、奴隷身分は母系で引き継がれるようになっていたことに怒りを覚える。
白人男性の主人が黒人女性の奴隷を妊娠させても、養育責任を果たさず、その子も奴隷として売却することができた。

読み終わった!......のだが、自分が重大な勘違いをしていたことに気づいたので、お詫びして情報を訂正します。

・『ある奴隷少女に起こった出来事』は、黒人逃亡奴隷女性ハリエット・ジェイコブズの自伝です
・「地下鉄道」指導者のひとりとして活躍した、黒人逃亡奴隷女性ハリエット・タブマンの伝記ではありません! 二人は別の人物です!

fedibird.com/web/statuses/1107

もともと「ハリエット・タブマン」に興味を持っていて、本書を見つけたのですが、「ハリエット」「黒人」「逃亡奴隷」「女性」といった情報が一致していたため、すっかり勘違いしていました。
ほぼ同世代の実在の人物だし。
・ジェイコブズ:1813〜1897年
・タブマン:1822〜1913年

お恥ずかしい......。どうりで地下鉄道の話がぜんぜん出てこないはずだ......。

『ある奴隷少女に起こった出来事』は、とてもよい本でした。

本書は関係者の安全を守るため、偽名を使って記されている(ハリエット・ジェイコブズ=リンダ・ブレントなど)。
長らくフィクションだと思われ忘れさられてていたが、歴史学者のイエリン教授(Jean Fagan Yellin)によって事実に基づいた自伝であることが発見され、発売から1世紀以上を経てベストセラーとなった。

私は、堀越ゆき翻訳・2017年発売の新潮文庫版で読んだのですが、こちらは「読みやすさを重視し、当時の奴隷制に関する著者の政治的見解や描写、ジェイコブズ自身の人生から逸脱する登場人物に関する記載、また当時の女性著者特有の現代では感傷的に響く重複は削除し、脚注も最小限に留め」ているそうです。

同じ本の別訳として、小林憲二翻訳・2001年発売の明石書店版『ハリエット・ジェイコブズ自伝―女・奴隷制・アメリカ』も出版されています。
レビューによると「黒人の反乱、文字の学習の禁止など」新潮文庫版では省略されていたエピソードも収録された完訳で、解説や注釈も豊富なようです。
価格が6050円と高いですが、流通量が減ってきているので近いうちに絶版になるかもしれません。

kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784

新潮文庫の方が手に取りやすいと思いますが、解説が作家・元外務省主任分析官の佐藤優で......。

私はそれがかなり嫌だったので、堀越ゆき訳『ある奴隷少女に起こった出来事』(2017)新潮文庫ではなく、小林憲二訳『ハリエット・ジェイコブズ自伝』(2001)明石書店をおすすめします。

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