紅蓮のリベレーターで最もモヤモヤした点
クガネ〜紅玉海〜ドマの文化について
エオルゼアは現実世界の様々な地域の文化をモデルとしつつも、「この国は現実のこの地域がモデル」というような一対一対応を避けつつ、人種や言語が混じり合う多文化共生圏的な世界である、という描かれ方をしている。
でもオサード小大陸の諸地域は(少なくともクガネとドマとヤンサとナグサは)そうではなくて、明らかに現実の東アジア世界をモデルとしている。ひんがしの国〜紅玉海は日本、ドマは日本〜中国、ヤンサはモンゴル、ナグサは中国〜ベトナムをモデルとしていることがはっきりと分かる。現実の文化圏、文化様式をファンタジー世界に反映させる際の手法がエオルゼアと異なるというのが、まず一つ気になった。
問題を感じるのは、現実の文化圏をそのまま一対一対応でファンタジー世界に当て込む場合に、製作者の所属する文化圏である「日本」的要素だけがやたらと肥大してしまっていること。具体的に言うと、ドマやが「中国的な地域」ではなく「日本〜中国的な地域」として描かれた結果、クガネや紅玉海と合わせて日本的な要素がやたらと増えてしまっていて、中国風の要素が限定的にしか描かれない結果になっている。
紅蓮のリベレーターで最もモヤモヤした点
具体的に改善すべき点を挙げるとしたら以下のような感じかな。
・ベストを考えるなら、エオルゼアと同じように、現実の国や地域と架空世界の国や地域を一対一で対応させないという方針を貫くべきだった。日本、中国、韓国、モンゴル、ベトナムといった地域の建築や衣服や名前などを、もっと徹底的にシャッフルしたりミックスしたりすべきだった。
上記が無理なのであれば、
・紅蓮で新しく実装されたジョブであるサムライと忍者の内、どちらかを中国風のものもしくはモンゴル風のものにすべきだった。
・オサード小大陸の人々の名前に中国風もしくはコリア風、ベトナム風の名前を混ぜるべきだった。現状、日本語風の名前しかないので(漢語風の名前も日本語として意味が通じるものしかない+漢字一字の姓であることを窺わせるキャラクターが皆無)。
・ダンジョンのモチーフや討滅戦の敵となるボスに、中国や韓国、ベトナムの神話や伝説に由来するものを採用すべきだった。一応四聖獣はいるけれど、全体として日本昔話風のテイストで進行していて、結局は「日本列島の人々が中国文化を受容した結果としての四聖獣」感が強いので。
紅蓮のリベレーターで最もモヤモヤした点
ドマが現実の中国に相当する地域であるなら、ドマにサムライや忍者がいるのはやっぱりおかしいし、中国的な地域を日本文化で侵食する描き方は戦前的なアジア主義への接近を感じるし、非常に嫌悪感と危機感を覚えた。
多分制作チームの人々はそこまで物を考えてこれを作っている訳ではなくて、単に中国風のものを描くのに情報や資料が足りなかった、厳しい言い方をするなら勉強していなかったのだろうと思う。中国文化や中国史に詳しいスタッフ皆無で勉強もせずに作った結果、「日本風にしておけば何となくそれっぽいでしょ」という感じで誤魔化してしまったのかなと想像する。
中国風のものが描けない、情報や資料や知識が不足している、という場合に「日本風のものを代わりに当てれば良いじゃん」と考えてしまう、その発想自体が中国的なものへの軽視を感じてしまって嫌だった。
あと、好みの話にはなるけれど、クガネ〜紅玉海のネオジャポニズム風の雰囲気も非常に苦手なので見ていてしんどかった。ネオジャポニズムとかYOSAKOI的な「和風」というものは何というか、日本語話者のオリエンタリズムの内面化の表出という印象で、上述の無意識のアジア主義と表裏一体の醜さを感じてしまうので、本当に私はドマ編がしんどかったです。