「起きろ餅付!!」
餅付「……ハッ!」
餅付が目を覚ますと、そこには見知らぬ天井。
それと、見覚えのある顔が並んでいた。
餅付の目覚めを確認すると、彼らは安堵の顔を浮かべてた。Minato「無事でよかった〜餅付くんここがどこだかわかる?」餅付は一生懸命状況を振り返った。
自分は過食とストレスによって倒れ、そのまま──餅付「俺、死んでないの?」
旧惑星「餅付くんが動画もSNSもずっと更新してないのが気になってさ。百連撃がキミの家を知ってたからみんなで駆けつけたんだ。大家さんに事情を話して鍵を開けてもらって、そしたら君が倒れてた」そう話す旧惑星の声は、歌い手として活動していた頃に比べ随分高音になっていた。
ゆうちゃむ「それであーしらで救急車呼んだの。あと数分遅れてたらやばかったって」帽子を被った女性がゆうちゃむであることを、餅付は声で気づいた。消息不明とされていた彼女とこのような形で再会したことに餅付は内心驚いた。
餅付「…なんで助けちゃうの。俺、いろんな人から死を望まれてるのに。俺なんか助けたら君たちまで叩かれるよ」Minato「だからって死んで当然ってことはないでしょ。まぁ思い詰める気持ちもわかるけど」
百連撃「つうかよ、今出回ってる炎上だってどうせ全部ガセだろ?名誉毀損でモレソを訴えようぜ」餅付「ダメだよ。モレソは…アイツはチョマテヨやTouTube社をバックにつけてるんだ。俺が何か言ったって揉み消されて終わりだよ」ZarameP「マテヨ…?どういうこと?」
餅付「信じてもらえるかわからないけど…」餅付は表彰後のマテヨとのやりとりを話した。マテヨの政治組織との癒着、マテヨがモレソに命じ、自分含め人気TouTuberたちを意図的に炎上させていたこと。その話にみな驚いたり、半信半疑だったりと様々な反応を見せた。
餅付「信じなくてもいいからね。どっちにしても時間が経ったらいつものように、みんな何事もなかったかのように忘れるんだ。それまで静観してれば…いいんだよ」その言葉はほとんど自分に言い聞かせていた。
百連撃「いいわけねぇだろ!デマならちゃん訴えろや!」旧惑星「やめろ百連撃!」
ゆうちゃむ「…それってさ、リルルちゃんもマテヨのせいで炎上したの?」
餅付「え?」ゆうちゃむ「モレソがリルルちゃんのプライバシーなこと勝手に明かして炎上させて、リルルちゃんすごく思い詰めてた。あれもマテヨが命じてたなら許せない」
ゆうちゃむは今も集中治療室で眠る古泉瑠璃の姿を思い出していた。
ZarameP「…どこまで関与してるんでしょうね…」ZaramePはファンに襲われた際につけられた腕の傷をさすった。自分を襲ったファンが自分の場所を特定した理由は警察から明かされなかった。もしそれがモレソやマテヨの仕業だったらと、恐怖した。
百連撃「クソっ、俺が逮捕されたのもマテヨのせいだってのかよ」Minato「それ百連撃サンの自業自得」餅付「で、でも何にしても証拠がないんだ。モレソとマテヨの繋がりも、政治家との癒着の証拠も。マテヨたちと戦うなんてできないよ」
旧惑星「うむ…その契約書とやらをなんとか回収できないかな」ゆうちゃむ「餅付くんがマテヨに謝ってさ、従うフリして懐に入り込むとかは?スパイ作戦」Minato「いやー流石にもう見限られてるでしょ」百連撃「…あ!待っていいこと思いついた!」
「え?」と皆の反応が一致した。百連撃「スパイ作戦。これでアイツらの鼻を明かせるはず!」
一週間後──────
優勝者がまさかの不祥事で活動を自粛し、あやふやな結末を終えたTOT。しかしTOTはそこで終わらない。マテヨたちは餅付に代わる優勝者を据えることにした。
マテヨ「いやぁ、本当アナタが無事でよかった。こうして新たな優勝者を見つけることができたんだから」
「ねぇ、あっくん」
あっくん「え、えぇ。繰り上がりという形ですが優勝出来て光栄です!」マテヨ「はは、動画の時に比べてアガってるな。そう畏まらなくて大丈夫だぜ」マテヨは餅付にした時と同じように、あっくんを自身の事務所への勧誘し、契約内容を明かした。
あっくんはマテヨに渡された契約書を何度も舐めるように見回した。あっくん「素晴らしい活動内容ですね!こんないい条件を餅付くんは断ったなんて…」その言葉を聞いたマテヨはしたり顔を見せた。
マテヨ「ふふ、実は餅付のあの炎上はモレソの『でっち上げ』なんだ」あっくん「えっ…?」
マテヨは餅付を意図的に貶めたことを明かした。それに続いてTouTube社と国民打益党との癒着、モレソとの繋がり、あっくんを畏怖させる目的で自身の所業を伝え、自身の権力の大きさを示した。マテヨ「餅付は馬鹿な男だがアンタはそんなことないよな」
あっくん「……なるほどな」「今のちゃんと“録れてました”?」
マテヨ「は?」あっくんは右耳に嵌められた超小型インカムに指を添え、通話相手に語りかけた。
旧惑星『バッチリ、契約書の内容もバッチリ録れてる』百連撃『流石Minato!!』
あっくん(?)「ちょ、名前出さないでくださいよ!!」
「オレのことバラさないでやるって話だったでしょ!」
マテヨはあっくん…いや、Minatの発言で悟った。このやりとりは撮影されている。あっくんが掛けているメガネのブリッジに小さな穴が空いていた。小型カメラだ。
モレソ「モモモ!マテヨさん大変レソ!」2人のいる応接室にモレソが入り込んできた。マテヨ「わかってる!お前コイツを取り押さえ──」モレソ「いやもう遅いレソ〜!」そう言ってモレソは電子パッドを見せた。
画面にはTouTubeとは別の動画配信アプリが開かれており、そこには今のマテヨたちの様子が、Minato視点でライブ配信されていた。
ゆうちゃむ「みんな聴いた〜?チョマテヨって優勝者に国民打益党との癒着を強制してたんだって!」旧惑星「しかもそれを断った餅付くんを意図的に炎上させただってー!?」百連撃「やだキモ〜イ!」
過去に炎上し活動を辞退したTouTuberたちが、自分たちのチャンネルにその配信を載せていた。同接数はTOTの表彰式を超える数字。マテヨと政治家の癒着に興味を湧かせたユーザーや、元TouTuberたちのファン達がこぞってそれらの配信を観ていた。
マテヨ「チョマテヨ!!めちゃくちゃヤベー状況じゃねえか!」ゆうちゃむ「読んだ通り!餅付くんに重要な機密を漏らすようなザルさなら、また別の優勝者を用意すれば同じことを繰り返すってワケ!」百連撃「オレの案だけどね!」
「「「「「いまだ餅付!いけー!!」」」」」
餅付は頷いた。彼らの声援に応えるように。
餅付は気づいた。自分の幸せを定義するものは登録者の数ではない。少数の身近な人たちと、苦楽を共有できることなのだと。
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