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中之条ビエンナーレ2023、会場の一つの山の上庭園で週末がらみの日程だけ提供される自主企画「架空民族料理」。学生の屋台ではという予想は完全にはずれ、一流の料理人による実験料理だった。

中之条の伝統的な山村暮らしに取材した食材と、料理人自身が山にはいって採取した木の実、ベリー類、香草を使ったもの(林間にフランボワーズが自生しているそうで、伝統的な中之条の食材ではないものの現にあるので、青い松ぼっくりといっしょにジャムにしたとのこと)。昔は米は希少だったので小麦と雑穀を使い、水も貴重だったので煮るのは動物脂肪の油という調理方法。そんな解説を料理人から聞いたあとに、客は庭園で自分の手で摘んだ生ハーブ(ミント、タイム、オレガノなど)といっしょに食する。

それなりのお値段で出てくるのはこのワンプレート。チャイは大量の香草を溶かしこんでうっすら炭酸味をつけたもの。カボチャ、茄子、その他の根菜は最小限の分量で、かわりに香草が濃密。塩分はごくわずか。エスニック料理で連想するようなカプサイシン辛さはまったくなし。ひたすら大量のハーブによる香りの刺激でトリップしてくださいという料理。

炭水化物はこの小麦粉の薄焼きが一枚のみ。この日は朝からふだんの5倍の運動量(歩数で。実際には急坂だらけなのでもっと)なのに、この昼食でたりるのかとちょっと心配に。でも食後は満足感があり、午後の行動中もおなかは空かず。むしろ(辛いものは食べていないのに)ハーブの刺激で内臓がほてったような感じが夜まで続いた。

戦後の日本人はタンパク質や炭水化物を豊富に摂れるようになって、それはたしかに豊かさだけど、かわりに失ったものもあるよねという味覚と体内体験でした。

料理人は千葉の松戸に店を持ちながら、昨年から六合地区に生活拠点を移したとのこと。15年前から続く中之条ビエンナーレを触媒に群馬の山奥にアーティストが集まりつつあるようす。

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