眺野さお「ミアプラキドゥスより愛をこめて」の感想と気になるところ
心が動いたわけではないが面白く読みました。以下ネタバレ含む感想。
【仕掛け】
-冒頭で見える本の名前が『クマノミ、ブルーヘッドそしてアオウミガメ』なので、どういうネタかはほぼ読めた
-ブチハイエナのメス、タツノオトシゴのオスは「人間と性による役割や臓器が異なる生き物は結構いる」と冒頭よりメジャーな例で示唆している。
【批判】
-侵襲的な行為に合意がない
私もそこは気になりましたが、一応「悪い宇宙人に食い物にされてしまうよ」「それも悪くないかも」で事前、「勝手に内蔵増やすって無断でしちゃだめですよ」で事後に了承が取れているのだろうと解釈しています。
-生殖やつがいを意義ある貴いものと見なす価値観に批判や転倒がない。
むしろこちらが気にる。恋愛と生殖を混ぜて語っていいのだろうか。生き物によっては生態に恋の要素がないし。
-諸星さんが主人公に自らをかわいらしい女性と誤認させたまま
諸星さんの外形の意図が語られないままなのも気になる。戦略はあったのか。長谷敏司『BEATLESS』のアナログハックみたいな、人外への片想いも恋愛だよ派に異存はないが。
https://comic-days.com/episode/2550689798875760599
本作では触れられなかった「外見・愛情・性規範」は、まえだくん『ぷにるはかわいいスライム』(コロコロオンライン)が思いのほかとことん追求している。今秋からアニメ化。
題名どおりのギャグマンガですが、たとえば53話のオリジンストーリー(本編の前日譚)なんて、規範になじめない苦痛がわかりやすく、多くの人に共感できる形で描かれてますよね。
https://www.corocoro.jp/episode/14079602755589688089
つづき
もしかすると作者のモチベーションは
1.生き物の多様な生殖のおもしろさをフェティッシュに描く
2.男性をエッチに描く
あたりにあって、恋愛の一方性や犠牲は読者が受け入れやすい味つけに用いられているだけでは。
「悪い宇宙人に利用された(でも許しちゃう、両思いらしいので)」である。青春とエモーションでふわっと誤魔化している。それが悪いわけではない、好きなものを描いてよい。
通常の人間の性愛と異なる生態を模索するフィクション、私も好物です。
いま検索したら、同じ作者がpixivに掲載しているマンガが「犬たちが身体の斑を確認し合う」ケモノ作品だったので、私の上記直感に裏づけができてしまったかもしれない。
https://www.pixiv.net/artworks/118403385