『文藝 2024年春季号』は特集:バルクアップ! プロテイン文学。人工筋肉の装用が当然となった社会の学校で使用済み筋肉の盗難が起こる円城塔「植物性ジャーキー事件」は社会の描写がわかりやすく丁寧でおかしい。児玉雨子「跳べないならせめて立て」は肉体を思うがままに使い、作り替える喜びと、トレーニングに熱狂する人たちが単一の種族と化していくうっすらした不穏さとおかしみを描く。

kawade.co.jp/sp/isbn/978430998

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李龍徳「反男性」と、特集外の王谷晶「蜜のながれ」の主人公はいずれも、世渡りのために男性性の使いかたに気を配らねばいけない現代において、周囲から男性性の行使について口を出されるそこそこ権威ある芸術家の男だった。両作者ともテーマによっては優れた作品を書くだけに、今作は相対的に評価は下がる。こういう感じの年配男性のズルさ、鈍感さ、行き詰まりへの“憑依”はもう一歩深くあって欲しかった。シミュレーションした小説には細部までリアリティが詰まっていると嬉しい。
長井短「存在よ!」はホラー映画の現場で雑に扱われる無名の芸能人と、現場にいた幽霊の女ふたりが交流する話。耐えるばかりではなく、できる範囲で変えていこうとするポジティブさが好ましい。一方で予想を大きく上回る展開はないため、もう少し長さが切り詰められていても良いように思った。
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王谷晶「蜜のながれ」の主人公の男、純文学~一般文芸の作家だけど若い頃は結構幻想小説やSFに傾倒していて、しかし文系だからイーガンが理解しきれない点に少々屈託があるという造型。地の文にクトゥルーネタもある。

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