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シーラン・ジェイ・ジャオ『鋼鉄紅女』(中原尚哉訳、ハヤカワ文庫SF)を読みました。出版社からの頂き物です。
選ばれし男女たちが変形する巨大ロボット霊蛹機に乗り組み、人類の敵である機械生命体〈渾沌〉と戦い続ける……とロボットものの王道と思いきや、歴史や現代やポップカルチャーが多重に投影され参照されたアクションアドベンチャーでした。
主人公の女性「武則天」が世の常識や偽りを暴き、破壊していくさまが痛快です。男性はメインパイロット、女性はそのエネルギータンクのように使い捨てられていく仕組みは本当にしかたがないことなのか。当代最強の戦士ながら重罪人でもある〈鉄魔〉李世民は、いかにしてそのような立場に追いこまれ、酒で操られるようになったのか。
地方や辺境を、女性や少数民族を犠牲にする社会に決然と反抗する物語ですが、ときどき笑えるシーンもあります。連携力を上げるためにアイスダンスを踊る修行をさせられているのに笑いました。味方の博士みたいなポジションの人も出てくるし。
カナダ人作家である著者は『ダーリン・イン・ザ・フランキス』からインスピレーションを受けたそうですが、少し前のオタクが少し前のオタク向けに紹介すると、操縦法は『パシフィック・リム』で『創聖のアクエリオン』+『マクロスF』な感じ。 感想1/2

なお続刊が予定されており、この巻は主人公たちが思い切った行動に出たり、すごい世界の秘密が明かされたりと阿鼻叫喚の結末で終わります。
さて、本書は歴史ファンタジーや改変歴史ものではなく「中国史に想を得た異なる物語」と宣言されています。武則天は中国史上唯一の女帝王にして非道な悪女とされていますが、本書の武則天はただの悪人ではありません。一冊かけてなぜ少女が社会すべてを敵に回したのかが書かれます。
世界観は纏足があって近代風ながら、タブレットやドローンがあったり、SNSと芸能界や政界のいやな関係性が描かれたりと現代にも重ねられています。歴史ネタはモチーフだけです。

そこそこロマンス要素があり、主役たちが容姿/体格に恵まれていそうな点は好みが分かれるかもしれません。私は、ロマンスやセクシャルな関心が登場人物たちの絆を深めた点は少し残念に思いました。
感想2/2

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