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サントリー社長の「国民皆保険」に関する発言が話題ですが、これを「国民皆保険の廃止」の主張だととらえると、かえって目くらましされるかもしれません。
よくよく聞くと「国民皆保険の廃止」ではなく、新技術や予防医療を公的保険ではなく民間で推進しようという趣旨ですね。これは「国民皆保険の縮小(廃止にあらず)」「公衆衛生施策の縮小」というかねてからの経済界の主張に沿っています。
経済界は、国民皆保険の廃止で需要自体が減ることを望んでいません。医療インフラの維持、生存権保障という儲からない分野は公に引き続き最低水準のコストで担わせ、その上をビジネスの対象にしたいのです。
極端なイメージで言えば、医療の「二階建て」化です。公的保険では空きベッドがなくてなかなか入院できず、受けられる医療も旧態依然のものばかりで新技術やQOLに関わるものは別料金。一方、特定の民間保険に入っていればすぐ入院できて新技術で安全かつ快適に治療することができます。
また、公的な保健では、自治体などが行う旧態依然としたレントゲンなどのがん検診を仕事を休んで受けないといけないのに、良い民間保険に入っていれば、無料や安価で最先端のがん検診や健康診断が受けられ、気になることがあればいつでもオンラインで相談、メディカルチェックができるという感じです。

こうした事態になれば、民間の医療・保険ビジネスは隆盛となるでしょうが、日本の健康寿命、健康水準は低下するでしょうし、医療費総額も青天井になり、その為の保険料も嵩んで家計を圧迫し、経済にも良い結果とならないでしょう。
また「二階建て」化がもし行われるならば、「特に持病のない健康な中間所得層」の負担が軽くなるかのように喧伝されるでしょう。既に「健康なサラリーマンが収める保険料が高齢者や働かない病人に無駄遣いされている」という不満が煽られており、このツリーにもそういう反応があります。しかし実は逆です。
重い健康保険料がなくなれば楽なようですが、家族や仕事、ローンがある人で「自分はけがや病気をしたら死んでも良い」という人は少ないでしょう。民間の保険に入ることになりますが、公的医療保険より一般に割高です。安く入れる保険はカバーが小さく、重い病気になれば自己負担で破産しかねません。
中間所得層では、無理をして家計に比して高い保険料を払い続けるか、医療費で破産するリスクを覚悟するかを選ばなければならなくなります。アメリカでも中間層が自己破産する最大の原因は医療費となっており、オバマケアもこれを改善できていません。

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