『よるべない花たちよ』上巻に収録されている読切『ルカの中華街彷徨録』は、夜の町を生き抜くために自分を「ハーフ」だと偽る青年・ルカと、酔っ払いに「国に帰れ」と絡まれている中華料理店の少女・花が出会うことで始まる、出自や生き方をめぐる物語で、とても良かった。だけど、中華料理店の娘である少女が「中国系/ハーフ」であるかどうかは作中で少しぼかされていて(酔っ払いのセリフから推測するに母方が中国系)、それ故に花の「ハーフ」への"興味津々さ"をどう取るべきか、読み手として少し迷う。子どもとはいえ、花が「中国系/ハーフ」でないなら花もかなり配慮がないし、花が「中国系/ハーフ」であるなら少々マジカルマイノリティっぽくもある。ルカと花の(ルーツに関する言動の)善悪を固定したくなくて、そして登場人物たちのバックグラウンドについて読者に考えさせるために作者は狙ってこうしているのかもしれない、とも思ったが。
下巻の読切『門は開く』の「ほんとに 門は開く!」のシーンが好き!