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I MAY DESTROY YOU / アイ・メイ・デストロイ・ユー

配信開始時の評判だけ覚えててあらすじも見ずに再生したから最初は何の話?って思ってたけど1話のラストで身体が硬直した。そこからは毎話身じろぎもできない。特にラストの12話はもう、とんでもない。一切説明的なことはしてないのに視聴者には全てが理解できる。

衝撃的なビジュアルや過剰な劇伴を使ったりせずに、性暴力を「すぐそばにあるもの」として描こうという信念があった。フラッシュバックや性暴力の表現は劇的に描かない分、見ているこちら側の生活にも侵入してきているような感覚に襲われる。注意喚起が必要なレベルだと思う(たぶんどこにもなかったけど)。誰もがただの「被害者」でも「加害者」でもなく、そこに存在していて息づくのを感じられるし、カタストロフをもたらす「許し」や「裁き」もない。そこにはただ現実と過去と未来がある。ここまで社会に誠実な作品が作れるとは。ミカエラ・コールにおみそれした。呪いのスタチューのようなビジョンやあの時の自分と同じ服を着た人が同じ空間にいる、などちょっとでも目を離せば見逃してしまいそうな演出を入れてくるところはシンプルに映像作家としても好みかもしれない。もちろん役者としても素晴らしいし。今後も楽しみな人。

ただ7話における環境保護とヴィーガンを巡る一連は全く納得いかなかった。たしかに白人主導でありながら有色人種にも遡及するために人種差別的な活動をしている団体もいるのかもしれないけど、だいぶ極端な例だと思うし、こういう活動全体が欺瞞であるかのような演出には鼻白んだ。SNSに関するあの人の「演説」も日本のネトウヨっぽいというか「真実をわかっている我々!」みたいな薄っぺらさを感じた。ラストのチキンを貪るところも浅はか。あの会社のマークがアボカド(環境負荷の高い植物)なのがそういう欺瞞の象徴なのか単に知らないのか、特に作中で突っ込まれなかったのでわからない。
あそこからSNSとの付き合い方にフォーカスしていくので全く意味がない展開とは言わないけど、その後立ち返って訂正されることもなく「一理ある」単独エピソードとして終わってしまったので残念。ここさえなければ一切瑕疵のない完璧な作品だったかもしれない。2020年の制作らしいけど、にしてもな……。ここもミカエラ・コールの体験談だったりする?だからって免罪されるわけでもないけど。

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