私はGrand Jury(大陪審員)を五週間務めた際に、米国の司法の問題の大きさを痛感。(Grand Juryは被告を起訴するだけの理由があるか、を判定するところ。裁判で有罪否かの判定に関わる陪審員とは異なり、面接などなくくじ引きで選ばれます。)少なくても、うちのカウンティーでは機能しているとは言えない状況。法律の内容を理解できない人、元警官で黒人の人に対して強い反感を持つ人、自営業で早く票決を済ませて、帰りたい人などがいて、議論がなく、検察の言う通りに投票する人ばかりでした。しかも薬物や武器についての「所有」という概念が非常に曖昧で、起訴段階では、大陪審員の主観で決まります。ここでも元警官なんかが声を上げて、なんでも所有ってことにします。NY州法では同じ罪を犯しても前科があるともっと重い罪状が課せられるし、そもそも、同じ罪について、刑法状の罰則のレベルが違うだけの同じ罪状を積み上げる方式。このようにする目的は、司法取引へのインセンティブを高め、弁護士を雇って戦えない人たちが、レベルの低い罪状を認めて、法廷まで行かないようにする為。無実を争い難くする仕組みです。どうして貧しい地区に育ったアフリカ系米国人が刑務所にぶち込まれて行くのかが良くわかりました。
大陪審員体験(続)大陪審員は起訴に値するかしないかを判定するもの。で、最初に一回だけ、検察側から刑法についてのレクチャーがある。うちのカウンティでは、レクチャーというより検察側からの一方的な洗脳だった。皆さんの判定は、有罪か否かに関わらないので、気楽に、みたいなコメントがあったので、私は挙手して質問。「有罪判決に関わらないと言いますが、我々が起訴状を認めた事例の何%が裁判になるのでしょう?」って聞いたら、6割は裁判にならない、つまり、司法取引(plea bargain)で有罪確定案件だった。だから、「我々が有罪判決とは関係ないとは言えないのではないか」って正したら、無視された。
そして、大陪審員は検察が罪状に関わる法律を読み上げるのを聞くだけで、法律書は見せてもらえない。社会科学で博士過程まで終え、大学で教えており、抽象的な概念や言葉を聞いて理解できる私でも、何回か類似の罪状を聞いて慣れていく感じ。なので、大陪審員の殆どは良くわからないで票決に参加。隣に座ってた女性は、最期の週に初めて私に、「貴女は聞いただけでわかるみたいだけど、私は大学も言ってないし、さっぱりわからない」って。問題多すぎる制度。
https://fedibird.com/@JapanProf/109563247437870149 [参照]