先日の「片手落ち」という単語を使ってはいけないのか、という疑問から始まって、Political Correctness (PC:政治的正義、政治的妥当性)、所謂、ポリコレに関する本にたどり着き、読んでみた。
本の内容としては、保守派によるPC批判が並べられた章から始まり、それに対する反論、PC論争の当事者の経験談、PC論争を乗り越える発展的な意見といった順に章立てされており、編者自身の文章は無い。
アメリカの事情に詳しくないと分からないような単語には訳者注が入っていて読みやすかった。
PC批判としては、アメリカの大学で差別的な使用を禁止する単語がリスト化されたり、差別を防ぐために多様性を認めるための授業が義務化されたりする中で、本来の古典のカリキュラムがおざなりとなった上、大学にとって最も重要であると考えられる、自由な発言が奪われているといった話が展開される。
#読書
アメリカの差別問題――PC(政治的正義)論争をふまえて (翻訳 脇浜義明)
原著 Beyond PC: Toward a Politics of Understanding (Aufderheide, Patricia, ed.)
https://amzn.asia/d/h8dRHAb
最初の、PC批判の文を読んでいると、日本におけるPC批判で展開される議論や用語とそっくりな部分もあって、元ネタっぽいものを知ることが出来て興味深かった。
日本の学術会議批判なんかも、アメリカの大学に対するPC批判の文章を読んで、日本の大学の事と思ったんじゃ無いかと思うくらい似ているので、原子力研究など日本の被爆国としての特殊な事情があるにせよ、日本固有の事情を持ち出して議論するのはPCに関する議論の芯を捉え損なっているのかもしれないなぁなどと感じた。
特に答を出してくれるわけでも無く、色々と考えさせられるところがあると思うので、興味のある方は是非。