源利文の「環境DNA入門」を読んだ。一般向けに書かれているので、専門知識が無くても読みやすく、次世代シーケンサー(登場から時間が経ったけど、いつまで次世代って言うんだろ?)の威力を感じさせてくれる。
例えば、川に生息している生物を実際に観察することなしに、川の水に含まれるDNAから、どのような生物が生息しているか調査できる。調査の経験が無くても、非常に見つけにくい生物相手でも、一定の手順で水をサンプリングしさえすれば良いわけだ。
本文中でも古DNAの話に触れられているように、DNAの量としては極微量であるため、コンタミネーションには気を遣う必要があるだろう。
サンプリングに関わった人や、その人のペット、食べた物のDNAまで拾ってしまう可能性もある。
犯罪捜査などで使われるようになることは容易に想像されるのだが、その辺の感覚を警察・検察や裁判所がちゃんと理解できるか、また、コントロール用も含め現場のサンプリング時から専門の第三者が入る必要が出てくるのでは無いかなどと思いを巡らせた。
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参考までに古DNAとは、遺跡で発掘された骨からDNAを抽出する場合に使われる単語。様々な理由でDNAが短く断片化したり、化学変化を起こしたりしているため、ターゲットとなるDNAが極微量で、解析には細心の注意が必要。
ペーボが、この分野を開拓したことでノーベル賞を取ったね。
特に、ヒトやその近縁種を扱う場合には、発掘や解析に関わったヒトのDNAが僅かに混ざるだけで解析の妨げとなる。COVID-19で話題になったことで、息に含まれる飛沫にウイルスのRNAが含まれていることは常識となったけど、そこから想像されるように、当然、ヒトのDNAもそれなりに含まれているわけなので、そのコンタミを防ぐのは非常に骨の折れる話なのです。
また、通常の解析では使えていた試薬であっても、試薬の製造段階で関わった生物の近縁種を解析の対象とする場合、試薬にコンタミしたDNAが邪魔になるので使えなくなることもある。
実際、友人が、古DNAの解析で苦労していたのを、よく知っているので、環境DNAでも、コンタミネーションに対する対処法が気になってしまうと言うわけです。