この暴徒化の背景にはローマ時代の厳しい身分制度があって、当時の高名な女性数学者ヒュパティアの殺害は社会の下層民であったパラバラニと呼ばれる死体を埋葬する仕事を請け負うキリスト教徒の若い男性の集団であったことや、迫害を受けていた奴隷や女性たちに殉教がめちゃくちゃ人気があったこと、この世で不幸であればあるほど天国での幸せが約束されているという教義に則り女性や子供たちが進んで苦しい目にあうために殉教したこと、などが描かれ、なんか…私はゴットフリート・ケラーの『七つの伝説』というキリスト教伝説集がとても好きで、聖母マリアをはじめ、ローマ時代や中世の女性の活躍が多々描かれる楽しい本なのですが、次に読むとき前と同じ感覚ではもう読めない…。
またキリスト教徒の数が増えると人気取りのためにすり寄るローマ提督も現れる、などの地獄が出現。そして文化が破壊しつくされたところで勝利は達成される、と。
念のために書いておくと、これらの暴徒化は新約聖書の内容とは大きく乖離しており(なにせ当時は識字率が低い)、この本の著者もキリストの教え自体を否定はしていません。
重い読書ではありましたが、ほぼ一気読みでまた読み返したくなる本。神殿神像やアレクサンドリア図書館等の美しい描写もたまらない(それが失われたことを思うと、さらに)。
#読書