SF作家のチャールズ・ストロス(『アッチェレランド』『シンギュラリティ・スカイ』)が、テック富裕層のSF的妄想をコテンパンに批判している。
Tech Billionaires Need to Stop Trying to Make the Science Fiction They Grew Up on Real
https://www.scientificamerican.com/article/tech-billionaires-need-to-stop-trying-to-make-the-science-fiction-they-grew-up-on-real/
ストロスの批判は、SFというジャンルそのものへの自己批判を含む。手痛い内容だが興味深いので、紹介したい。
「テック界隈の億万長者たちは、自分たちが育ったSFを現実にしようとするのをやめるべきだ」
「今日のシリコンバレーの億万長者たちは、古典的なアメリカのSFを読んで育った。今、彼らはそれを実現しようとしており、危険な政治的展望を体現している」
「ジェフ・ベゾスは1970年代の巨大軌道居住施設の計画を好む。ピーター・ティールは人工知能、延命、海上国家の研究に資金を提供」
「マーク・ザッカーバーグは、ニール・スティーブンソンの小説『 スノウ・クラッシュ』に登場するメタバースを作ろうとして100億ドルを吹き込んだ」
(続く
「このジャンル(SF)は、先行するLLM(大規模言語モデル)により大きく汚染されたテキストを使用して訓練された新たなLLMのように動作する。ほとんどのSFは、その分野の歴史を反映する限りにおいて保守的であり、新境地を開拓したり、既成概念に疑問を投げかけたりすることはない」
感想:SFというジャンルそのものに跳ね返ってくる手痛い批評だが、価値がある言説だ。(なお元記事はテクノ富裕層の怪しい思想を批判する用語「TESCREAL」にも言及している)
SF作家は、少なくともSFファンが馴染んできた諸概念にイデオロギーが含まれていることには自覚的であるべきだろう。
そしてテクノ富裕層のSF的妄想には警戒を。