しかしEA(効果的な利他主義)の中心人物であるオックスフォード大学哲学科准教授ウィリアム・マッカスキルは、人権を故意に無視した結論を平然と語ります。
問い:火事の家で、1人の子どもを助けるか、高額なピカソの絵を助けるか?
答:ピカソの絵。売れば大勢の子どもの命を救える。直観に反する答であることは認めるが、現代ではお金の力は信じられないほど強力だ。
このような言説は、功利主義の欠陥に対する「故意の無知」の誤謬です。
なぜ、このような誤謬を語るのか。それは直観に反する過激な結論はテック界隈の投資家や起業家のウケがよく、また言葉が巧みなため言い抜けできるからです。
直観に反する「逆張り」の言説がウケて、EAは大勢のエリートの支持と巨額の資金を集めました。しかし、ビジネス上は成功しても人権を無視した思想は危ういと考えます。
なお、功利主義と人権をめぐる議論については、私が以前書いた下記の記事を見て頂けるとありがたいと思います。
自由と平等のブロックチェーン──倫理、人権と技術を接続する
https://note.com/akiohoshi/n/ne8d69e8fba1a
功利主義の良い点と欠陥について、なるべく公平に触れています。そして、なぜ自分が「人権」にフォーカスしているか、そのひとつの根拠を説明する文章でもあります。