より若い世代では、破綻した暗号通貨取引所FTX創業者のサム・バンクマン=フリード(SBF)はEA(効果的な利他主義)コミュニティのホープだった。「より稼げる職種に就職し、より多額の寄付をしよう」というEAの教義を真に受け、彼はMITからウォール街のトレーダーを経て暗号通貨取引所FTXを創業。寄付活動を盛んに行ったが、やりすぎて顧客の資産を勝手に運用して溶かし破綻、本人は逮捕されて実刑判決を待つ身だ。彼(SBF)を甘やかし、FTXの振る舞いを警告するアドバイスを無視したとして、EAコミュニティは批判され評判を落とした。
最近のOpenAIのサム・アルトマン解任劇では、解任派の役員にEA(効果的な利他主義)コミュニティの幹部が2名含まれていたことが話題になった。
そのアルトマンも、批判が多いWorldcoinプロジェクトの推進者だ。
アフリカにルーツを持つAI倫理研究者Timnit Gebruは、テック界隈で流行する軽薄な思想群を"TESCREAL"と名付け批判している。
"TESCREAL=Transhumanism, Extropianism, Singularitarianism, Cosmism, Rationalism, Effective Altruism, Longtermism
思うに、「若い高学歴のテック系白人男性」だけが考える「人類全体のための良いやり方」は、機能しないだろう。
女性、非白人、差別される属性の人々など、マージナル(周縁)の意見を取り入れた対等で成熟した対話がなければ、人類の未来を語る資格はない。しかし、思い上がっているテック界隈の若者達は、聞く耳を持たないかもしれない。
それでも、強調しておきたい。功利主義以外の倫理学をちゃんと学ぼう。20世紀の大陸の哲学者の思想にも良いヒントがある。そしてマージナル(周縁)の人々との対等な対話を。