下記の記事では、OpenAI内紛をめぐり、EA( Effective Altruism、効果的な利他主義)とe /acc (Effective Accelerationism、効果的な加速主義、EAのパロディ)の口汚い論争が起きているという話を紹介している。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00692/112200120/
1人の平凡なアジア人の目から見れば、EAもe/accも、功利主義という思想の変形版であり、功利主義の脆弱性を思い切り悪用し、エリート主義——というより差別思想・優生思想・植民地主義を肯定する思想に見える。
このような功利主義の脆弱性を補うには、大陸系の哲学、特にカント倫理学と組み合わせることが有効だ。これは日本の高校で教える倫理の教科書レベルの知識。国連やEUが原則として採用している「人権」の作りもそのようになっている。
しかし英語圏では、カント倫理学や人権はあまり人気がない。テック界隈では、極端な功利主義、エリート主義に基づく未熟な"逆張り"言説が力を持っている。こうした軽薄な思想の信奉者の片側には、ピーター・ティール、イーロン・マスク、マーク・アンドリーセンのようなそうそうたるテック封建領主の名前が挙がる。(続く
思うに、「若い高学歴のテック系白人男性」だけが考える「人類全体のための良いやり方」は、機能しないだろう。
女性、非白人、差別される属性の人々など、マージナル(周縁)の意見を取り入れた対等で成熟した対話がなければ、人類の未来を語る資格はない。しかし、思い上がっているテック界隈の若者達は、聞く耳を持たないかもしれない。
それでも、強調しておきたい。功利主義以外の倫理学をちゃんと学ぼう。20世紀の大陸の哲学者の思想にも良いヒントがある。そしてマージナル(周縁)の人々との対等な対話を。