下記の記事では、OpenAI内紛をめぐり、EA( Effective Altruism、効果的な利他主義)とe /acc (Effective Accelerationism、効果的な加速主義、EAのパロディ)の口汚い論争が起きているという話を紹介している。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00692/112200120/
1人の平凡なアジア人の目から見れば、EAもe/accも、功利主義という思想の変形版であり、功利主義の脆弱性を思い切り悪用し、エリート主義——というより差別思想・優生思想・植民地主義を肯定する思想に見える。
このような功利主義の脆弱性を補うには、大陸系の哲学、特にカント倫理学と組み合わせることが有効だ。これは日本の高校で教える倫理の教科書レベルの知識。国連やEUが原則として採用している「人権」の作りもそのようになっている。
しかし英語圏では、カント倫理学や人権はあまり人気がない。テック界隈では、極端な功利主義、エリート主義に基づく未熟な"逆張り"言説が力を持っている。こうした軽薄な思想の信奉者の片側には、ピーター・ティール、イーロン・マスク、マーク・アンドリーセンのようなそうそうたるテック封建領主の名前が挙がる。(続く
より若い世代では、破綻した暗号通貨取引所FTX創業者のサム・バンクマン=フリード(SBF)はEA(効果的な利他主義)コミュニティのホープだった。「より稼げる職種に就職し、より多額の寄付をしよう」というEAの教義を真に受け、彼はMITからウォール街のトレーダーを経て暗号通貨取引所FTXを創業。寄付活動を盛んに行ったが、やりすぎて顧客の資産を勝手に運用して溶かし破綻、本人は逮捕されて実刑判決を待つ身だ。彼(SBF)を甘やかし、FTXの振る舞いを警告するアドバイスを無視したとして、EAコミュニティは批判され評判を落とした。
最近のOpenAIのサム・アルトマン解任劇では、解任派の役員にEA(効果的な利他主義)コミュニティの幹部が2名含まれていたことが話題になった。
そのアルトマンも、批判が多いWorldcoinプロジェクトの推進者だ。
アフリカにルーツを持つAI倫理研究者Timnit Gebruは、テック界隈で流行する軽薄な思想群を"TESCREAL"と名付け批判している。
"TESCREAL=Transhumanism, Extropianism, Singularitarianism, Cosmism, Rationalism, Effective Altruism, Longtermism