【11/23】I APPEAL UNTO CAESAR(私はシーザーに訴える) 第33章 https://akito-takizawa.com/2024/11/23/i-appeal-unto-caesar_241123/
船長と百人隊長が船首楼にやって来て、聖人に冗談を言った。「船長、今、恐ろしい危険はどこにありますか?船の損傷はどこにありますか?ご覧なさい、この船がいかに勇敢に波を乗りこなしているか。
日が沈む頃には安全な港に近づき、そこに安全に留まるでしょう。町から遠く離れ、冬の間は悲しげな住居となるであろう、あの寂れた入り江に留まるのは、本当に愚かなことです。」
「私の助言が愚かだったと信じられたらよかったのに」とパウロは答えたが、額に浮かんだ悲しみが、このふたりの陽気な笑いとつまらない勝利を抑えた。
「私たちの前に何が見えますか?」とジュリアスはささやいた。
「見てください」とパウロは言い、手を上げてクレタ島の丘に向かって振った。
彼らの上には、岸に打ち寄せる波をにらみつける暗い雲の帯が広がっていた。そして、その高地の周りの空は、雨が降った後の夕暮れの影のような銅色だった。天空全体が急速にこの病的な、この赤茶色に染まった。
穏やかな南風はため息をつき、もはや生きることに耐えられない消耗した存在のように落ちていった。奇妙な静けさが海に降り注いだ。波、風、陽光が降り注ぐ