sss:魔女が食む。(※白黒さんの二次創作です。BL注意※)
花屋が良い物を寄越した。喪服のようなやみの中、遺体じみた唇はゆったりと花弁を食み、刺々しい歯でさりりと破る。舌に触れる、渇ききった薔薇の香りと砂糖粒。脆い白は灯火に透かすだけ霞む。
灯火が増した。足音に連なり点灯していくランタンの光で黒い男の輪郭がようやく見える。白い男は安楽椅子で斜めに微笑む。
「それは私の物だが?」
「ならば私の物だ」
黒に応える白の手はこれ見よがしにガラス瓶を弄んだ。瓶の中、白い薔薇の砂糖漬けがさらさら揺れる。一枚だけ混じる赤い花弁が白に埋もれる。
「仕方ないな、赤いのをくれてやろう」
白い指がシュガートングの先端で新たな一枚をつまむため、齧り欠けは薄灰の唇に挟まれた。黒い男は喰いついた。文字どおり、音も立てずに距離を詰め、己と同じ形の頭に爪を立てて鷲掴み、漆黒の顔からぎらりと凄む牙で以て、食い差しの花弁を唇の肉ごと齧り取る。
血があごを伝ってぽとぽと落ちた。ガラス瓶に蓋が置かれる。深く切れた唇が笑みに震えた。
「浅ましい」
破れた花弁の表面で、まとった砂糖が血を吸って溶けている。