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【ほぼ百字小説】(5448) この宇宙は、かつて作られた宇宙の盗作なのではないか、いや、パスティーシュだろう、むしろリスペクト、とか、そんな議論が続いて、ややこしいからもう終わらせよう、という結末もやっぱり盗作では、という見方が。
 

【ほぼ百字小説】(5446) そう言えば、最初の欠片を拾ったのは、巨大な門が取り壊された後の更地だった。門の上層に棲んでいる鬼の話を読みながら思う。あの門にも何かが棲んでいたのかどうかはわからないが、今は大型安売り店が建っている。
 

【ほぼ百字小説】(5444) ひさしぶりに来てみたら表には精肉店の看板が。ここだったはずだけどなあ、と首を傾げていると、これは看板だけで中身はこれまで通りなんですよ、と声をかけられた。前よりちょっと注文は多いかもしれませんけどね。
 

【ほぼ百字小説】(5443) 寿命はかなり長いらしく、このままいけばまず間違いなく私のほうが先に死ぬ。その前に次の飼い主を見つけねばならず、さもなければ、作るしかないか。迷惑だろうとは思うが、まあ私もそういう理由で作られたのだし。
 

【ほぼ百字小説】(5442) 次々増えていく廃ビルのひび割れたその壁面に草が生え、まるで草原のようになったのはついこのあいだのことだが、今ではその草原を様々な人間以外の動物たちが悠々と歩いている。あれ、どうやったらできるのかなあ。
 

【ほぼ百字小説】(5441) 今年も鳥人間コンテストが開催される。出場できるだけでも大したものだし、優勝したり歴代記録を更新しようものなら、それはもう大変な栄誉である。鳥人間を自称して天使たちが参加するようになったのも無理はない。
 

【ほぼ百字小説】(5440) 地下の舞台で朗読している。ひとり読み終えると暗転になり、明かりが入ると次の者がそこにいる。何度目かの暗転の中、頭の上でずどんと何かが鳴って天井からばらばらと何かが降ってきた。長い暗転はまだ続いている。
 

【ほぼ百字小説】(5439) 幽霊の缶詰を持っている。幽霊はその金属を透過することができないから、缶詰にできるのだ。何の幽霊なのかは開けてみるまでわからないがそれでも、自分はいつでも幽霊を出せるのだと思うと、心がすこしは休まる。
 

【ほぼ百字小説】(5438) これまでの自分ではないものになる練習。生まれる前にこんなことをしなければならないなんて。まだまだうまくはやれないが、繰り返しやればだんだんできるようになることはわかった。二足歩行はだいぶうまくなった。

【ほぼ百字小説】(5437) 皆で集まって、荒れ地に埋もれているらしい何かを掘り出そうとしているのだが、なんのためにそんなことをするのかがわからない。まあそれをするために掘り出されたのだから、そんなこと考えなくてもいいのだろうが。
 

【ほぼ百字小説】(5436) 墜落した異星の船に乗っていた異星人を捕獲して殺害し、その船から得たもので豊かにはなったが、今もその仲間が探しにくることに怯えていて、我々がファーストコンタクトに失敗するのはそのせいだと分析されている。
 

【ほぼ百字小説】(5436) 墜落した異星の船に乗っていた異星人を捕獲して殺害し、その船から得たもので豊かにはなったが、今もその仲間が探しにくることに怯えていて、我々がファーストコンタクトに失敗するのはそのせいだと分析されている。
 

【ほぼ百字小説】(5435) 毎日、亀を見ている。それでわかるのは、毎日、亀に見られている、ということ。物干しで、物干しのどこかにいるはずの亀を探し、見つけたときにはもう亀と目が合っている。亀に観測されることで存在しているのかも。
 

【ほぼ百字小説】(5434) 本物そっくりに作られた月面で仕事をした。月面だから宇宙服を着る。それを撮影する仕事をする者たちは宇宙服を着ていない。宇宙服の中からそれを見ていた。そこが本物の月面そっくりだとまだ誰も知らない頃のこと。
 

【ほぼ百字小説】(5432) 身体に植物を生やすようになった、というより、植物の根によって肉体組織の崩壊を抑えてもらっている、というべきか。そのせめてものお返しとして、いずれ自分が埋められるいい場所を動けるうちに確保しておかねば。
 

【ほぼ百字小説】(5431) 水平線にずらり並んで、もこもこと成長を続けている。少し前まではヒトに似た形が主流だったようだが、今はもう別の形のほうが多くて、ヒトは隅に追いやられている。まずはここで試すのかな。我々は早すぎたのかも。
 

【ほぼ百字小説】(5430) 目がふたつあるのは、狸が化けた台風だから。ふさふさの尻尾が出ているのも、狸が化けた台風だから。ふらふら進路の定まらない千鳥足も、そのせいだろうな。では、この雨の正体は――。それは考えないことにしよう。
 

【ほぼ百字小説】(5429) 台風の真っ只中での本番、あるいは中止を覚悟していたが、風はないし、朝は降っていた雨もやんでいる。もちろんそれは大助かりなのだが、なんだか狸にでも化かされたような気分で、その気分のまま狸の話を朗読する。
 

【ほぼ百字小説】(5428) もちろん亀は鳴かないし歌わない。亀の歌とは、亀が歌うのではなく亀の側にいる者が亀のことを歌う歌なのだ。亀を見て亀のことを歌わずにはいられなくて歌う。そういう意味では、亀は鳴く、とも、歌う、とも言える。
 

【ほぼ百字小説】(5427) 亀を歌った歌だ。物干しに暮らす亀の速度で洗濯物を干しながら、亀の中を亀の速度で流れる亀の時間を歌った歌。現実には鳴かない亀が、「亀鳴く」という言葉の中でだけ鳴くみたいに歌うこと、という注意書きがある。

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