小説を書いたりしてます。
【ほぼ百字小説】(5597) 月から持ち帰った土に水を加えて作った泥を団子にして月の砂でぴかぴかになるまで磨くと、その表面には月の海と呼ばれる部分とまったく同じパターンが出現することから、月も同じようにしてできたと考えられている。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5596) あの球面のスクリーンに昔から映写されてきた映画だ。誰もが観たことがある映画だが、いつから続いているのか、いつまで続くのか、誰も知らない。そんな長い長い映画。夜空にあるその銀幕は、月、とも呼ばれていた。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5595) 昔、メンテナンスのアルバイトをしていた博物館へ。あの頃のままのところも変わったところもあって、懐かしいような寂しいような。呪いの人形は今もガラスケースの中。あのガラスケースの中に入ったこともあったな。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5594) 昔、同じ映画に出演したのだが、商店街で出会ってもわからなかったのも道理、あの頃の彼はまだ小学生だったのだ。変わったなあ、と私は言い、変わってませんねえ、と彼は言う。もうずいぶん昔のことだったんだなあ。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5593) ビル街ではなく怪獣の墓場。だからビルではなく怪獣のお墓。では、暴れているのではなくお墓参りなのか? そう尋ねると、違う違う、遊んでるだけ。でも墓場で遊ぶのって危ないんだよ。墓石が倒れてきたら死ぬから。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5592) 最近の気候の変動のせいか、坂が削られてどんどん急になってきていて、それなりの装備がなければとても下ることができそうにない。転げ落ちても同じでは、などというのは生者の考えで、死者だって死ぬのは怖いのだ。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5591) 巨大怪獣をやってたことがある。巨大じゃなくてむしろ小柄だが、ミニチュアの街で暴れて見せた。ミニチュアの時代が終わって職場を去る日、花束と着ぐるみをもらった。ヒトの着ぐるみ。今もそれを着て、演じている。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5590) 月光のほうが日光より曲がりやすくて、それで家々や塀の隙間をぐねぐね抜けて、こんな路地の奥の借家の小窓まで届くのだ。何度も曲げられた月光は散乱しにくくなっているから、こうして窓の下の浴槽に溜めておける。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5589) 貸金庫の中に死体、それも人間にこんなことができるのかというようなぐちゃぐちゃの惨殺死体だ。わかりました、と探偵。冬眠目的で貸金庫に入ってきた熊と窃盗目的で貸金庫に入ってきた行員とが鉢合わせしたのです。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5588) 日課のように自分の頭を掘っているのは、泥にまみれた何かの部品らしきものが出てくるからで、掘り出したそれらを並べて、自分の中に埋まっているこれらはいったい何の部品なのだろう、と穴だらけの頭で考えている。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5587) 妻の実家の庭には小人が出現することがあって、妻は何度も目撃しているとか。すごく小さいよ、と妻は言う。ちょっと前にもひさしぶりに見たけど、昔見たときより小さくなってた。あれは成長してるのかもしれないね。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5586) ヒトというよりカッパのように見えるのは、復元の際、欠損している遺伝情報をカメやカエルのそれで補ったから。水辺でカメやカエルたちと仲良くやっているのもそれでか。そんな生き物なら、ヒトは滅びなかったかも。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5585) あの公園をジュラシック公園と呼んでいたのは、恐竜がいたから。その恐竜は、コンクリートの山にある洞穴みたいな土管の中にひとりで棲んでいた。土管の奥から聞こえてくる声は、お風呂の中で泣いてるみたいだった。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5584) 旅先の妻から写真が送られてくる。それは、もうひと昔ほど前にいっしょに泊まった宿だったり、歩いた海岸や買い物をした雑貨屋、そしてあのとき探し回ったが結局出会うことができなかった亀。セマルハコガメの写真。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5583) 線路が敷かれることになったから、もうそこでは遊べなくなった。線路が敷かれればいろいろ便利になる、と大人たちは言っていた。線路は敷かれて、その上を列車が走って来て走り過ぎた。駅はいつまでもできなかった。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5582) お椀の形をした月に見えていたあれは、月に擬態した船だったんだな。色も形もそっくりだから、ここまで近づいてきて、やっとそれがわかった。小型乗用車くらいの大きさのそれが今、二階の窓に横付けしてくれている。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5581) 押入れの奥に穴を見つけてしまった。では、やっぱり狸か。よく旅行に出るのは、向こうに用事があるからか。どうせならバレないようにうまく化かして欲しいが、こんなうかつさもやっぱり狸だからか、と妻の旅行中に。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5580) 子供の頃は、よく月が降りてきた。稲刈りが終わった田んぼとか、空き地とか、川原とか。そういうある程度の広さがある平らなところが無くなってしまったから、降りてこなくなったのかな。そう思っていた頃もあった。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5579) 亀にはスキップなどできない、と一般には思われているが、冬眠のあいだ、冷え切った亀の体内時間はほとんど静止していて、だから亀にとっては、冬眠に入ったとたん春になる。そうやって亀は時間をスキップするのだ。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5578) ぬいぐるみとは無理でも、亀とならできるぞっ。つい声を荒げてしまったのは、ぬいぐるみと話せないことを亀に指摘されてくやしかったから。物干しから居間に戻ると、あんまり大声で亀と話さないほうがいいよ、と妻。#マイクロノベル #小説
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