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【ほぼ百字小説】(5462) サメたーいむ、海水浴たーいむ。サメたーいむ、書き入れたーいむ。サメたーいむ、入れ食いたーいむ。サーメサメサメー、サメのたーいむ。サメじゃないけどサメのたーいむ。醒めた目をしたサメのたああああああいむ。
 

【ほぼ百字小説】(5461) 波間に漂う紐のようなものが、図形を作っていた。次から次へと形を変えるそれらが文字のようにも見えたから、もっとよく見ようと覗き込んだところまでは憶えていて、だからこうして文字になって伝えることもできる。
 

【ほぼ百字小説】(5460) すっかり天使率が高くなった空の下を『交差点の天使』の解説を書いてくれた演出家の手掛けた芝居を観に行くその途中、玄関前に置かれた亀の水槽を見かけて、水槽に書かれていたその亀の名がトキ。『かめたいむ』だ。
 

【ほぼ百字小説】(5459) 地上はまだ暑いが、空は秋になって天使率が急上昇しつつあるようで、様々な天使の部品がそこここに浮かんでいる。それらを見上げ、頭の中で好きなように組み立てていると、ほんのすこし身体が浮かぶような気がする。
 

【ほぼ百字小説】(5458) 創作というより、自分に流れ込んでくるものを溜めて固めて出しているだけ。つまり、空っぽの器のようなもので、なるほど出てくるものはいかにも小さい器のそれだ。まあ小さい器には小さい器にできることがあるから。
 

【ほぼ百字小説】(5457) 最初のドミノが倒された時点で、すべては決定されている。だから選択できるのは、最初のドミノを倒すか倒さないか、だけ。倒されれば結末まで進んでいく。もう止められない。ああ、うっかり倒しちゃったんだよなあ。
 

【ほぼ百字小説】(5456) 開けた瞬間にもう缶詰ではなくなるから、それでは缶詰の中を見たことにはならず、だから缶詰の中を見るためには缶詰を開けずに見なければならない。いっしょに缶に詰められたのは、そんな理由らしい、と缶詰の中で。
 

【ほぼ百字小説】(5455) 鉄橋を渡る電車の窓から川面を見ていて、でかい亀がっ、と声を上げそうになり、でもそれはわずかに水面に出た大きな岩だと気づいて、そうだった、この前もそう思ったっけ、と毎回思い出すというのはどうしたものか。
 

【ほぼ百字小説】(5454) 月着陸船の模型を持っている。月の海に水は無いから船なのに脚がある。その脚で月の海に立ったのだ。帰るときはもういらないから、月の海に置いてきた。今もそこに立っている。月を見上げる度、その脚のことを思う。
 

【ほぼ百字小説】(5453) 今夜も月を見に行く。そういう季節なのだ。狭い路地を奥へ進むと小さな空き地に出る。そこに立てばいつでも月が見える。だからあれは本物の月ではない、という者もいるが、それは我々だって同じようなものだろうし。
 

【ほぼ百字小説】(5451) ここにあった海がどこかへ行ってしまってから、毎日ここに立って海が帰ってくるのを待っている。毎日同じところに立つから、海のあったところにある砂丘がゆっくり移動しているのがわかる。大きな波のようだと思う。
 

【ほぼ百字小説】(5450) 亀を使って未来を予知する、という方法は大昔から用いられてきたが、実際には、亀は未来を予知しているのではなく未来を創造している、ということが証明されつつある、というこれもまた、亀によって創造された未来。
 

【ほぼ百字小説】(5449) 未来の動きを決めてもらう。その未来の先の未来へと安全に進めるように。その未来に居合わせることが決まっている者たちが集まって、指導を受ける。そういう職業があることは知っていたが、決めてもらうのは初めて。
 

【ほぼ百字小説】(5448) この宇宙は、かつて作られた宇宙の盗作なのではないか、いや、パスティーシュだろう、むしろリスペクト、とか、そんな議論が続いて、ややこしいからもう終わらせよう、という結末もやっぱり盗作では、という見方が。
 

【ほぼ百字小説】(5446) そう言えば、最初の欠片を拾ったのは、巨大な門が取り壊された後の更地だった。門の上層に棲んでいる鬼の話を読みながら思う。あの門にも何かが棲んでいたのかどうかはわからないが、今は大型安売り店が建っている。
 

【ほぼ百字小説】(5444) ひさしぶりに来てみたら表には精肉店の看板が。ここだったはずだけどなあ、と首を傾げていると、これは看板だけで中身はこれまで通りなんですよ、と声をかけられた。前よりちょっと注文は多いかもしれませんけどね。
 

【ほぼ百字小説】(5443) 寿命はかなり長いらしく、このままいけばまず間違いなく私のほうが先に死ぬ。その前に次の飼い主を見つけねばならず、さもなければ、作るしかないか。迷惑だろうとは思うが、まあ私もそういう理由で作られたのだし。
 

【ほぼ百字小説】(5442) 次々増えていく廃ビルのひび割れたその壁面に草が生え、まるで草原のようになったのはついこのあいだのことだが、今ではその草原を様々な人間以外の動物たちが悠々と歩いている。あれ、どうやったらできるのかなあ。
 

【ほぼ百字小説】(5441) 今年も鳥人間コンテストが開催される。出場できるだけでも大したものだし、優勝したり歴代記録を更新しようものなら、それはもう大変な栄誉である。鳥人間を自称して天使たちが参加するようになったのも無理はない。
 

【ほぼ百字小説】(5440) 地下の舞台で朗読している。ひとり読み終えると暗転になり、明かりが入ると次の者がそこにいる。何度目かの暗転の中、頭の上でずどんと何かが鳴って天井からばらばらと何かが降ってきた。長い暗転はまだ続いている。
 

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