BT、アリアン・シャフヴィシ『男はクズと言ったら性差別になるのか』についての、ぬまがさワタリさんの一連のトゥートは本当にその通りだと思うのですが、でも私はやはりこの邦題は良くないと思う。

前にも書いたけれどこの本は、人種差別や性差別への指摘に対して「逆差別だ!」とまぜっ返すような反論をすることをはじめ、批判や指摘を受け止めずに別の方向へ捻じ曲げる言説について、現実社会での様々なシーンを例に出して哲学のレンズで考えてゆく内容。
にもかかわらずこの邦題だと、むしろ「逆差別だ!」と主張する側の手法を取ってしまっているように感じて、ものすごく引っ掛かかる。
章タイトルでのレトリックの場合と本のタイトルになる場合とでは、受け止め方も本への印象も全く変わるし……。(まさにタイトルだけ見て差別だ!と怒っている人は論外ですが)

この本に限らず、手に取ってもらうための販促戦略とはいえキャッチーさ優先で煽動のようなタイトルを付けてしまう出版社の姿勢は疑問だし、信頼できないな……と先ず思ってしまいます。

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アリアン・シャフヴィシ『男はクズと言ったら性差別になるのか』

ここまでタイトルのことでモヤモヤするのは、正直、私は書店でこの本を見た時に「ミサンドリー的な内容では……?」と怯んだのが第一印象で、信頼できる著者/内容なのか不安に思ったから。
このタイトルのようなフレーズが出てくる場合、セクシュアル・マイノリティへの偏見をはじめ様々な差別言説を内包していることも実際に多いから、どうしても警戒してしまう。

知らない著者や書籍の場合は、訳者あとがきや帯や解説を書く専門家の言葉を見て「大丈夫な本」かどうかを判断しているけれど、本書はどちらも無かったので本屋の店頭で判断することがそもそも難しかったところに、この煽りタイトルだったから……。
結果、良い本だったけども。

社会学やフェミニズムの棚に置かれていても、社会の周縁にいる人々を無視して白人キャリアウーマンだけをエンパワーする『LEAN IN』的なホワイト・フェミニズムの本じゃないかどうか、それどころかフェミニズムの本のフリをしたヘイト本じゃないかどうか、読者側は買う際にマジでめちゃくちゃ警戒しているんですよ!
ということを、出版社には本当〜に知っていてもらいたい。

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