この数年間に読んだいろんな方のエッセイの中で、2022年に出た柚木麻子さんの『とりあえずお湯わかせ』が一番、本としての全体の構成に工夫がたくさんあって素晴らしいなと思ったエッセイ本でした。

2018年からの4年間の連載を本にするにあたって、ひと月ごとのエッセイの末尾に現在(2022年)の柚木さんによる一言ツッコミが加えられ、さらに1年ごとに編集後記として後日談エッセイまで書き下ろされている。まえがきとあとがきも、もちろん有る。

このスタイルで本を作るのはすごく大変なのだと思うけれど、読者としてはめちゃくちゃ楽しいし嬉しい。

柚木麻子『とりあえずお湯わかせ』

柚月さんのTwitterを見ていた人ならご存知の通りのあの勢いと語り口そのままで、様々な辛い現状についても真摯な言葉に励まされ元気が出るエッセイです。

過去のエッセイに対する柚月さんのセルフツッコミを読んでいると、日記を読み返す行為の楽しさを感じるとともに、「この時のことを思い出すと深刻に辛くなるので、他人事のように突き放して読み返している」という振り返りも書かれており、その感情もすごくよく分かる。
日記にはいろいろな面があるけれど、日々の何やかんやを言葉に残していくことはやはり良いな、大事だなと思う。

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柚木麻子『とりあえずお湯わかせ』

それと島本理生さんの直木賞受賞会見での、記者から出た「旦那さんの、一番の好きな料理はなんですか?」という、マジで「はあ???」な質問への怒りから、「もし自分が受賞会見でその質問をされた場合の回答35通り」を挙げていく回も最高でした。

あらゆる返しパターンを探った末に、

質問に困惑する柚月さんに一人の女性が記者席から立ち上がり、「そんな質問、答えなくていいよ。柚木さん」と言い放つ島本理生さん。見つめ合う2人──

というスーパーシスターフッド展開をぜひ読んでほしい!
(柚月さんの夢見る理想の空想です。島本さんに掲載の許可はもらっているそうです)

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