ホラー小説が好きなのだけど、人の営為による願いや祈りを描かずに怪異だけポンと出されたり、その土地の民俗をちゃんと描いていない「土俗ホラー」はすごく苦手。
特に「因習村」系がイヤなのでそう謳っている本は買わないようにしているけど、今読んだ新作ホラーアンソロジーの中にド直球の「因習村」話が入っていて、読んだがやっぱり苦手だった〜。
舞台とするその「田舎」の風習は見えないままに悍ましい因習と怪異だけを創り出して、「外」から来た人間が「田舎」とその村人たちをジャッジする構図、というのは私的には一番嫌いな「土俗/因習村ホラー」だ……。
こういうタイプの小説を読むたびに、数年前の横溝正史ミステリ&ホラー大賞の選評で辻村深月さんが「近年、田舎を田舎というだけで何が起こっても許される装置として乱暴に描いてしまう応募作が多い」と書いていたのを思い出す。
澤村伊智さんも以前から「土俗的な風習を持つ人々を異物として描かない」と意識していることや、「異文化を恐怖の対象として扱う作品を無邪気に楽しんではいられないという意識」について語っていたし、田舎や異文化を「ホラー」的に面白がる態度について読者に冷や水を浴びせる『予言の島』のような作品もあるし。
ホラー小説は、こういう問題意識が大前提になっていてほしい。