『私の身体を生きる』
作家17人による、「身体」にまつわるエッセイ。自らにも内面化された強固な規範意識とその圧力への葛藤、わだかまり、怒りなどが作家それぞれの体験や思索を通して語られる。
性別を理由に受ける蔑視や暴力、様々な形で表れる人権軽視があまりに蔓延っている日本社会のリアルを改めて突きつけられるので、通して読むのがものすごく辛かった。
ただ、この本は『文學界』の連載をまとめたものだけど、企画趣旨の説明などが無い(まえがきもあとがきも無い)のは残念に感じた。なぜ今このテーマを取り上げたのか、編集部の姿勢を示してほしかった。
企画趣旨を表明するページは蛇足なんかではなく、必要だと思う。
『私の身体を生きる』
そんな中で書き手の一人である柴崎友香さんが、編集者に企画趣旨を確かめ「なぜ書き手の性別を限っているのか」など疑問をぶつけた上で仕事を受けたことを書いていたのが良かった。
柴崎さんがエッセイのはじめに書いていたこと(下記引用)を、出版社自ら表明してほしかった。
「女性が自ら身体や性について自分の言葉で語ることは長らく抑圧されてきたが、一方で、身体や性について説明や理由を求められるのも、女性や性的マイノリティの側である。語らされないのも、語らされるのも、同じ構造のもとにある」
「中心にいる側の人の言葉で中心にいる側の人にわかるように語れ、「わかる」かどうかは中心にいる側の人が決めてきたということ」(p180/柴崎友香)
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