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小川公代『ゴシックと身体 想像力と解放の英文学』

19世紀英国のゴシック小説を、「“ゴシック”はつねに政治的な機能を果たしてきた」戦術という視点で読み解く一冊。
引用される作品を未読でも全く問題なく面白いです!

「“ゴシック”とは、因習や道徳に抗う方法論として“想像力”と“倫理”を効果的に運用する近代における新たな装置なのではないだろうか」

ジェイン・オースティン『ノーサンガー・アビー』においてゴシック小説のお約束である、犠牲となる高潔なヒロインや古城などの舞台装置が「家庭の領域」に置き換わっていることを、「家庭の領域が、ゴシックの基盤、あるいは女性を対象とした暴力、虐待、搾取のトポスとして読み直すことができる」とし、
そこからメアリ・ウルストンクラフトの『女性の虐待あるいはマライア』について「“ゴシック”に常套の展開を家庭の領域に持ち込み、女性にとっての真の恐怖物語を描いた」「当時のイギリス社会に生きた女性の現実的な恐怖やみずからの生命を守ることの価値を示そうとする戦術なのではないか」と論じる章が素晴らしかった。

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