上川多実『〈寝た子〉なんているの? 見えづらい部落差別と私の日常』

部落出身の両親と部落ではない地域で生まれ育った著者が、幼少期から日常の中で起こる周囲とのギャップに対して何を思い、どのように向き合ってきたのかが、つぶさに記されている。
差別とその矮小化への戸惑いと憤り、両親も属する組織としての運動内部の抑圧とその在り方への疑問、大きな運動を離れ別の方法を探し実践してきた過程、他の属性のマイノリティが受ける差別と自身のマジョリティ性を知ったこと、そして子育てにおいて二人のお子さんとの接し方など、誠意にあふれた思考と実践が丹念に綴られており、すごく力をもらった。
個人的に人生ベストに入る、素晴らしいエッセイでした。

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上川さんの経験と誠意ある語りに、私もまた自分自身のマイノリティ性だけを見て他の属性については深く知らないままに生きてきたのだと、改めて突きつけられた。

「これまで自分の「部落」というマイノリティ性にばかり目を向けていた私自身も、「部落」「女性」という以外の属性で見ればマジョリティ特権だらけであり、自分が困っているわけではないからと目を向けずにいることで、差別の温存に加担していることが数え切れないほどあるということも感じずにはいられなかった。」(p186)

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