松田青子『自分で名付ける』
出産後に区の係の人の訪問を受けた際のこともすごく印象に残っている。
結婚はせずにパートナーと暮らす松田さんの選択と、その松田さんのお宅の雰囲気に対して区の人が言った「なんかこの家、自由だね〜」。区の係の方は快活な人でこのコメントからも嫌な感じは受けなかったそうだけれど、それでも様々な思いがよぎる。
「でも、私は自由に生きているつもりはなくて、いろいろ窮屈に感じていることのほうが多いし、真面目に生きている。制度や「普通」の枠におさまっていないから自由、というのはちょっと違うように思う。
自分の、名字を変えたくない、という気持ちを尊重するためには、「普通」を諦めるしかないのが現状だ。制度のほうが、「普通」の枠を広げたらいいやないか、そっちの「普通」が狭いくせに、こっちにドヤ顔してくんなよ、という気持ちでいつもいるし、同性婚など、他のいろいろなケースにもこれが当てはまる。」