西村紗知『女は見えない』
タイトルやテーマからの想像に反して、通常のフェミニズムの文脈とは違う形での対象への眼差しと思索で論が展開する。
まえがきとしての提示された「推し」文化の分析(『「貨幣」と「娼婦」の話』)がすごく面白かったので、色んな人に読んでもらいたいな。内容も文も強烈で、脳内でこの著者の独特な文のリズムがずっとリフレインしている。
ただ、私も著者の言うところの「貨幣的な創作物」へ対して不満を抱く一人であるだろうが(「貨幣的な創作物」とは、「人々の願いや主観をそのまま反映させてはいるけれども人々が転覆してほしいと思うものを転覆してくれないもの」と提示されている)、作品とはそういうものであったはずと言われればその通りで(「自分の信念の仮託」を貨幣はやってくれない)、しかし実際のところ私はその作品が批判性を伴わないことへ失望しているのではなく、この世の中で多数派がエクスキューズ無しに受容する様を見続けている少数派の切実な痛みや憤りを「アレルギー的反応」と呼び軽視されたくはない。