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マリーケ・ビッグ『性差別の医学史 医療はいかに女性たちを見捨ててきたか』(片桐恵理子 訳)を読みました。

常に男性を基準として発展してきた医学の領域について、様々な事例をもって論じながら「医学はジェンダーニュートラル」という欺瞞を暴いてゆくエッセイ。
ジェンダーバイアスによって周縁に追いやられ、医療が遅れ健康を害する「男性以外の身体」について、男女二元論から脱却しその先を目指さんとする、誠実でかつ面白く魅力的な語りがめちゃ良かったです!

マリーケ・ビッグ『性差別の医学史』

ちなみにグウィネス・パルトロウのウェルネス商売にも触れられていて、私もパルトロウの“翡翠の卵”やヤバイ香りキャンドルのことは知っていたけれど、これをドン引きで終わらせちゃダメだった…と反省した。

遡れば古代ギリシャからずっと行われてきた、「女性の内部が汚れている(→だから綺麗にしないとダメ)」という、家父長制に基づく「身体的神話」の健康観を再生産する、最低最悪で有害な商売だった。

女性が自らの身体をセルフコントロールしたいという感覚を利用して、エンパワメントの名を借りて女性の健康への不安を煽っている…。

しかしパルトロウの非科学的で性差別的な製品が普及してしまうのは、不安の解決策を求めても応えてくれる医師がおらず、女性の健康がないがしろにされ周縁に追いやられる現状があるため。
だからそうした非科学的な「膣の神話」に立ち返ってしまう女性に対して無知とバカにするのは絶対に違うから、著者がその点を明確にしてくれていたことに安心した。

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