『キャンディマン(2021)』、とても良かった。
事前知識を何も持っていなかったので、「鏡の前で5回“キャンディマン”と言うと現れる」という都市伝説ホラーかあ、と思って観始めたら、凄惨な黒人差別の歴史と今もなお続く抑圧や暴力について、歴史を紐解きながら現在の論点までを重層的に描く、とても切実な作品だった。
都市伝説としての「その名を呼べ」は、人種差別の犠牲者たちの名前が語られてこなかった歴史のことでもある、とも思った。
エンドロールでの影絵アニメーションで語られる悲惨な出来事に、作品テーマを改めて突きつけられる。
『女神の継承』鑑賞。
タイの小村で信仰されている、女神バヤンを身に宿すニムの姪ミンに起きる怪異を、モキュメンタリー形式で描く。
内容も描写もかなりキツい作品なのだが、女神の依代としての人生を受け入れているニムの在り方、しかし胸に秘めた信仰への揺らぎが垣間見えるところなどは、めちゃくちゃ好きだった。
この作品、(フェイク)ドキュメンタリーの構成と撮り方のクオリティが高くて、更にニム役の方の佇まい・演技が素晴らしいこともあって、特に最序盤の見せ方の上手さには感動した。
ドキュメンタリー撮影という設定によって、ケア・サポートを受けられない若い女性が追い詰められる姿や、田舎の保守的な構造が浮かび上がってくる。
それと同時に、カメラを向ける撮影クルーの無遠慮な視線への嫌悪感、彼らの倫理観に対する不信感が募りに募った果ての、ラストの阿鼻叫喚は凄まじい衝撃だった。
撮影クルーは自業自得とはいえ、あそこまで映し出したのはスゴイ。
赤ちゃんや動物がとても酷い目に遭うのが辛いのだけど、個人的に一番嫌だったのは、憑依されたミンが幼児を突き飛ばすシーン。
かなり本気で胴に手が入り倒れたように見えたし、子供たちの唖然とした顔とその後泣き出す感じは本当にやっているとしか思えず、嫌悪感がすごかった。今思い出しても辛い……