絶対に好きに決まってると確信して借りた本を読了して心を奪われてる。記憶のアーカイブとしての料理本。
著者は日本人とレバノン人の共通項として『福祉民族』という表現を用いている。「日本は福祉国家ではなく、福祉民族だ」とル・モンド紙の論説にあったそうで。
「国家は自らの責任を放棄している。国がそれでもどうにか機能しているのは、人々が助け合い、なんとかやりくりして解決策を見つけているからだ」
「都市計画に対する国家の無関心、公共空間の不在、選挙の進め方、社会を覆っているタブー、政府が国民を尊重していないこと、多くのカタストロフが続いたために、あらゆるものはいずれなくなるという意識が強くあり、それが国民の一種の諦念にもつながり、結果として指導者に都合の良い状況を生んでいること」
レバノン料理は自分にとってライトだけれど現地の人に言うと否定され、和食はライトと言われるが日本に帰るたび太るというくだりは、その分析の言語化具合がおもしろい。
「外部から食文化に出会う者は、敬意を持って、一種理想的なやり方でその料理に接するのに対し、その食文化の内部にいる人は、食べ過ぎたり、偏った食事をしたり、飲み過ぎたりなど、逸脱しても許されるとみなしているのだ」

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ノスタルジーを語る章の冒頭の文章「ノスタルジーは千の顔を持つ」がフレーズとしてかっこいいので同人誌のタイトルにしたくなる(笑)。たぶんこれはウィリアム・アイリッシュの『夜は千の目を持つ』に因んだ書き出しなんだろうな。
食いしん坊の私にとって一番インパクトがあったのが217章。ここに出てくるブドウの葉のてんぷらに撃ち抜かれちゃって心の底から食べたい。
「かすかにぶどうの香りが漂う、春の終わりを閉じ込めた味で、最後に漂うほのかな酸味も心地が良い」
ああ、いい読書だった!

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